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セ・リーグ予告先発でスコアラーの職危機に 中日は3人削減

 観客動員数の低迷に歯止めをかけるために、セ・リーグが導入を決定したのが予告先発制度。確かに先発が誰なのかわかれば、ファンは球場へ足を運びやすくなる。だが一方で、予告先発導入に悲鳴をあげる「球界の住民」が多いのも事実だ。まず困ったのは、スコアラーたちである。

 球団に所属するスコアラーは、「チーム付きスコアラー」と「先乗りスコアラー」に大別される(中には「先々乗りスコアラー」もいる)。平均して4~5人、大所帯では10人以上抱えている球団もある。

 チーム付きスコアラーは、自チーム各選手の能力やクセを分析、そのデータをもとに課題や対策をアドバイスするのが主な仕事。一方、シーズンが始まれば自軍を離れ、次か、次の次に対戦するチームの試合に“先乗り”して、偵察に赴くのが「先乗りスコアラー」の役目だ。

 ゲーム中は、登板する各投手の配球や球種を細かくチェックするとともに、野手の動き、打席での結果から調子や傾向を読み取り、データを持ち帰る。そして最大の目的の一つは、数日後に自軍と対戦する先発の予想だ。これまでのセ・リーグでは、この「先発投手の読み合い」が、勝敗の鍵を握っていたともいえる。だが、今後はその読み合いをする必要がなくなった。セ球団の元スコアラーが語る。

「我々にとっては商売あがったりです。パでは1994年に予告先発が導入された途端に先乗りスコアラーを廃止した球団もある。誰が投げるかわかれば余計な人件費を削減できるから、球団としては大歓迎なのでしょうがね」

 すでに動き始めた球団もある。中日は昨季の終了をもって、12球団中最多だったスコアラー11人体制を8人に減らした。1球団につき1人の担当を置く体制は、情報戦を得意とする落合前監督の主導で敷かれたもの。その落合監督は、予告先発導入反対論の急先鋒でもあった。

「落合前監督の中日を相手にしている時などは、常に2、3人の投手が同じ調整をしていたので、誰が先発かを見極めるのが一苦労であり、スコアラーの腕の見せ所でした。午後5時のバッテリー発表で、予測を外したのがわかった時などは大慌てでしたが、落合さんと知恵比べをしているようで楽しかった。予告されてしまえば慌てる必要はなくなります。ただ、それは同時にスコアラーの仕事が奪われることを意味する。怖いと同時に、なんだか寂しいですね」(同前)

※週刊ポスト2012年3月30日号

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