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由紀さおり「21世紀の歌謡曲をつくろう」と口説かれ全米1位

 米国のジャズオーケストラ、ピンク・マルティーニとコラボレートしたアルバム『1969』を昨年10月に発表した由紀さおり(63才)。このアルバムは世界20か国以上で発売され、米国のiTunesストアのジャズチャートで見事1位を獲得。カナダ・iTunesでもワールドミュージックチャートで1位に輝いたほか、ギリシャやシンガポールなど、世界各国で大ヒットとなっている。

 由紀とコラボしたピンク・マルティーニは、ピアノ奏者のトーマス・ローダーデール(41才)をリーダーに、1994年に米国ポートランドで結成されたグループ。由紀とのコラボのきっかけは、10年以上も前に遡る。トーマスが中古レコード店で由紀のファーストアルバム『夜明けのスキャット』を見つけ、そのジャケットに魅かれて購入。透明感のある歌声に魅了されたという。2007年には由紀の曲『タ・ヤ・タン』を日本語でカバーした。

 そのころ、由紀は姉の安田祥子(70才)と共に童謡コンサートで全国の会場を回っていた。しかし、由紀のなかには、「還暦を迎えるにあたって、もう一度、歌謡曲と向き合いたい」との思いが募っていた。

 所属するレコード会社の関係者に相談すると、由紀はふたりの人からそろって「音楽プロデューサーの佐藤剛氏と組んでみては」とアドバイスされたという。佐藤さんは1970年代に甲斐バンドのマネジャーを担当し、独立後はザ・ブームや小野リサなど数多くのミュージシャンをプロデュース。歌謡曲とは異なるジャンルを手がけてきた人だ。

「このふたりを掛け合わせたらおもしろい化学反応が起こるに違いない」

 そうしたスタッフの確信から、佐藤さんに白羽の矢が立った。佐藤さんが振り返る。

「仕事の依頼を受けたのは2008年4月ころのことでした。由紀さんに初めて会ったとき、“なんて聡明な人なんだろう”という印象を受けました。彼女は最初のミーティングで、自分が何をやりたいか、なぜやりたいか、どこを目指すのかということを、きちっと全部、言葉で説明してくれた。そのとき、由紀さんは“歌謡曲を復活させたい”と話していました。

 当時、日本にはすでにJポップと演歌というふたつのジャンルしかなくて、歌謡曲というのは死語になっていた。そこでぼくは由紀さんに“21世紀の歌謡曲をつくりましょう”と答えたんです」

 そうして2009年に発売されたのが、由紀にとって約4半世紀ぶりのソロアルバムとなる『いきる』だった。ソロに戻り、新たに歌謡曲を歌い始めた由紀。一方、ピンク・マルティーニが『タ・ヤ・タン』をカバーしていることを知った佐藤さんは、すぐにピンク・マルティーニに連絡をとった。

 2010年3月にはピンク・マルティーニの1日限りの来日公演が実現し、スペシャルゲストとして由紀が『タ・ヤ・タン』で共演。同年11月にはピンク・マルティーニが世界リリースしたアルバムにも由紀が参加した。

『1969』は、こうして熟成された関係のなかから誕生したのだった。

※女性セブン2012年4月12日号

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