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憲法改正の第一歩「国民投票法」 2007年に安倍首相が成立

 橋下徹大阪市長は憲法改正に必要な発議要件である国会議員の3分の2以上の賛成を2分の1にすること、参議院の廃止、憲法9条の是正を掲げている。1955年の自民党結党以来、党是とされつつ、実現しなかった憲法改正に着手するのか。これまでの憲法改正の道のりを拓殖大学大学院教授・遠藤浩一氏が解説する。

 * * *
 憲法改正のための第一歩は、安倍晋三元首相が平成19年(2007年)に通過させた国民投票法(正式名称:日本国憲法の改正手続に関する法律)である。

 これは憲法改正に向けた大きな一歩であるが、これに続く「第二歩」に必要なことはどんなことか、誰がやるのか。それを橋下徹氏ができるのか。

 まず、テクニカルな問題として、現行憲法は非常に改正しづらい仕組みになっている。日本国憲法は96条で改正の手続きを次のように定めている。

「憲法96条1項(改正の手続)
 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする」

 要点をまとめると、【1】まずは衆参両議院でそれぞれ3分の2の賛成が必要。【2】国民投票にかけて、過半数の賛成を得ることが必要、という2段階方式になっている。これは非常に改正しづらい、面倒な手続きだ。橋下氏であろうが、誰であろうが、まずは、ここをクリアしないと改正にはいたらない。

 安倍晋三氏がやったのは、改正を実現するための具体的な手続き(おもに国民投票のやり方について)を、決めたことだった。たとえば、国民投票の投票権は誰にあるのか、投票運動はどこまで自由なのか、といったことなのだが、そういうことすら、2007年までは決められていなかった。

 改正しづらい形になっている理由は、おいそれと変えられないようにということである。もともと日本国憲法の性質が、戦後まもない占領下における、戦争勝者が戦争敗者に強要した、日本人を二度と立ちあがらせないようにした「外交条約」だったことに起因する。

 昭和20年(1945年)の玉音放送から、昭和27年(1952年)のサンフランシスコ講和条約まで、戦後、アメリカ等による6年8か月の被占領期があった。しかし、最初の3年4か月と、後の3年4か月でアメリカの方針は大きく変わった。

 前期では、膺懲(ようちょう=こらしめること)的な日本解体政策が取られ、その期間に、憲法が制定される。ところが、後半では、東西冷戦、そして朝鮮戦争が勃発したために、方針が「日本弱体化」から「西側の友国として育成」に変わる。

 国際社会への復帰と主権回復を掲げる戦後日本、時の吉田茂首相は、米国務長官ダレスの「再軍備をしてくれ」という申し出に対し、軍備安全保障は旧敵国のアメリカにゆだねると日本の再軍備を拒否した。

 実際には「自衛隊」を創設し、再軍備をしたが、それは軍隊ではないと言わねばならない状態となった。以降、保守派の政治家にはこの解消が共通の課題となった。

「アメリカに決められた憲法を守りながら/日本国家の主権を回復する」という、二律背反な状況。これを丸抱えしたのが吉田茂の判断だったので、その後は、「脱吉田こそ、脱戦後」が保守政治の主調音となる。

 そうして、昭和30年に保守合同の自由民主党が結党される。この党は、8つの派閥が、自主憲法制定の大義のためにひとつに集合してできた政党である。自主憲法制定は党是であった。

 自民党政権とは、最初から、改憲のための派閥連立政権、という色を持った政権だった。

※SAPIO2012年5月9・16日号

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