■個人差が大きい「NEAT」をうまく増やすコツは?
森谷教授が提唱する“ちょこまか運動”には、決まった動きはない。
「座っている時間を極力減らすだけでよいのです。例えば、立っているだけで、座っているときに比べて約20%も多くのエネルギーを使います。どんなに優れたダイエット器具でも、連続してこれだけの効果を発揮できるものはありません」(森谷教授)
前屈みの姿勢になれば、座っているときの約40%多いエネルギーを消費。歩けば3倍、階段を上がれば8倍ものエネルギーを使う。
「NEATは、個人差がかなり大きいのです。京都大学で、特に運動をしていない女子学生を対象に行なった実験では、活動量が多い群、少ない群を比較すると、1日あたりのエネルギー消費量に200kcalの差がありました。それを1年に換算すると、10kgの脂肪がつくほど、運動量に差があることになります」(森谷教授)
カナダでは、1万7000人を12年間追跡調査したところ、1日中座っている人は、座る時間が短い人に比べて、心臓疾患などで死亡する率が約1.5倍も高いという結果が出た。
「最近では、内臓の脂肪から、2型糖尿病や高血圧症、脂質異常症などを引き起こす遺伝子が発現することがわかっています。肥満者が糖尿病を併発すれば、脳・心臓血管系の疾患で死亡する確率は4倍にまで跳ね上がります。脂質異常症も併発すれば9倍以上、高血圧症も加われば16倍。さらに、内臓脂肪はアルツハイマー病やがんの発症にも関係するということも、わかりつつあります」(森谷教授)
普段の生活の中で、「座らない」「なるべく立ったり、歩いたり」を意識して、NEATを増やすことが、内臓脂肪を減らし、ひいては生活習慣病を予防する近道といえそうだ。
また2008年にメタボ健診が始まったことから、ウォーキングなどの軽い運動を取り入れる人も増加している。気温が上がるこれからの時期は、運動だけでなく、ちょこまか動くだけでも汗をかくため、熱中症や脱水症状を予防する必要がある。
「水分補給は、のどの渇きを覚えたときでは遅いのです。“ちょこまか運動”とともに、ふだんから“ちょこまか”水分をとる習慣をつけておくのが大切です。また、汗をかけば水分とともにナトリウムやマグネシウムなどの電解質も失われますから、水と一緒に効率よく補給する必要があります」(森谷教授)
汗をかいたとき、水分だけを補給すると、体液の濃度が下がる。それを調整するため、体は薄い尿や水っぽい汗で水分を排出し、その結果、体液がかえって不足するという事態に陥る。それを防ぐには、水とともに電解質を補うのが、最も効率のよい“ちょこまか水分補給”となる。
そうしたニーズをふまえて日本コカ・コーラからは、メタボが気になり始める35歳以上をターゲットにしたスポーツ飲料『アクエリアス ゼロ』が発売された。電解質と水分を同時に補給できるだけでなく、ゼロカロリー、燃焼サポート成分「カルニチン」を配合。“ちょこまか運動”で脱メタボを目指す人に、フィットするアイテムになりそうだ。
年齢とともに、重くのしかかってくる体重や腹囲。運動に取り組み始めても、思い通りには減らなかったり、挫折してしまったり……という人も多いだろう。そういう人は「ガツンと減らす」から、“ちょこまか運動プラス水分補給”に意識を切り替えれば、意外とスムーズにウェイトコントロールが可能になるかもしれない。