国内

人気の「ドライブラック」 若者のビール離れに手こまねかず

 スーパードライ初の派生商品として、『ドライブラック』を発売したアサヒビール。CMにダルビッシュ有を起用し、狙うゾーンはズバリ、20代~30代の男性だという。新しい黒ビールが、ダルのようなスタートダッシュを切れるかどうか、大注目だ。作家の山下柚実氏が報告する。

 * * *
「若者の○○離れ」。どきっとするフレーズだ。特に企業の商品開発やマーケティングの担当者の胸に突き刺さるコトバ。

「車」も「活字」も「お酒」も、みんなこのフレーズで語られてきた。若者たちはなぜ、遠くへ去ってしまったの? どうしたら戻ってきてくれるの? 

 嘆き節も聞こえる。でも、それは本当なのだろうか。もしかしたら若者たちは「離れた」のではなくて、意外と「近い」ところにいるのではないか。

「ハイボール」がヒットした時、そんな思いがよぎった。ウイスキーを炭酸で割るという飲み方を提案すると、「新鮮!」とばかりに飛びついた若者たち。ハイボールは今も昔も変わりはない。だとすれば、若者が「お酒から離れた」わけじゃないのかも。

 ではビールは? 7年連続で出荷量過去最低(1992年以降)を更新中というビール系飲料。その中で、年間1億ケース以上を売り上げる『スーパードライ』を有するアサヒビールも、「若者のビール離れ」にただ手をこまねいているわけではなかった。

 4月3日、スーパードライ初の派生商品として、『ドライブラック』を新発売。CMにダルビッシュ有を起用し、狙うゾーンはズバリ、20代~30代の男性だ。新しい黒ビールが、ダルのようなスタートダッシュを切れるかどうか、大注目だ。

 発売から1週間ほどたった頃、同社を訪ねて直球をぶつけてみた。ドライブラックの売れ行きはいかがでしょう?

「ありがたいことにお花見のタイミングにピタリと間に合いました。事前の予約受注は予想の2倍を超え、4月末までで、年間販売目標の半分以上となる115万ケースを売り上げました。スーパーやコンビニでも目立つ場所に置いていただいています」

 と同社マーケティング本部担当副部長・杉浦克典氏(41)は言う。まずは上々の滑り出し、ということらしい。

「我々の意気込みは、従来の黒ビールの延長線上を行くというよりも、『新しいカテゴリーを創り出そう』ということなんです」と鼻息が荒い。 

 聞けば、黒ビールの市場規模は年間約100万ケース、これは全体の0.2%に過ぎないとか。ドライブラックはそれと同じ数量を1か月で達成した格好だが、「年末までにその2倍、200万ケースを目指します。新しい飲み方、楽しみ方を提案できるかがポイントです」

 出荷の減少傾向が続く厳しいビール業界だが、スーパードライは堅調な動きを続け、さらに近年「良い兆候」も表われている。キーワードは「氷点下」。

 暑さの中で、マイナス2℃~0℃にまで冷やしたスーパードライを飲む、新スタイル「エクストラコールド」を提案したところ、昨年は特設BAR4店舗に13万人もの人が来店し、全国の飲食店での取扱店も1656店まで拡大したのだ。店には行列ができた。女性を含めて若い世代が目立つ。

「ビールは冷たいほうがうまいし、キレ味も鮮明になる。氷点下という新しい飲み方を提案したら若い人たちが行列してくれた。きちんと提案できれば応えていただける。まだまだやれることはある、と反省したんです」(杉浦氏)

 では、「黒ビールの新しい楽しみ方」の提案とは何なのか?

「一般的な黒ビールの味は、コクがあり濃くて苦みも強い。普通のビールは日本人の舌に合わせてどんどん変化してきましたが、黒ビールは変化していない。黒ビールも日本の消費者の味覚に合うように製造すればもっと日常的に楽しんでいただけるのではないかと考えました」

 黒ビールは、イギリスでビール市場の30近く、アメリカでも約5~6%を占めている人気ぶり。しかし日本では、ごくわずかしか飲まれていない。それは「日本人の嗜好」にフィットする形で変化していないからではないか。そう考えた同社は、黒ビールの開発に着手した。コンセプトは「辛口、ブラック」。

「スーパードライと同じ酵母を使い、キレ味のあるまったく新しい黒ビールに仕上げました」

※SAPIO2012年6月6日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

“ATSUSHIものまね芸人”として活動するRYO
【渦中のRYOを直撃】「売名じゃない」橋幸夫さん通夜参列で炎上の“ATSUSHIものまね芸人”が明かした「反省」と「今後」…「100:0で僕が悪者になっている」との弁も
NEWSポストセブン
滋賀県を訪問された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月7日、撮影/JMPA)
《再販後完売》佳子さま、ブラジルで着用された5万9400円ワンピをお召しに エレガントな絵柄に優しいカラーで”交流”にぴったりな一着
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(共同通信)
《やる気スイッチ講師がわいせつ再逮捕》元同僚が証言、石田親一容疑者が10年前から見せていた“事件の兆候”「お気に入りの女子生徒と連絡先を交換」「担当は女子ばかり」
NEWSポストセブン
真美子さんと大谷が“即帰宅”した理由とは
《ベイビーを連れて観戦》「同僚も驚く即帰宅」真美子さんが奥様会の“お祝い写真”に映らなかった理由…大谷翔平が見計らう“愛娘お披露目のタイミング”
NEWSポストセブン
渡邊渚さんが、「選挙」と「投票」について綴った(撮影/松田忠雄)
渡邊渚さんが綴る“今の政治への思い”「もし支持する政党がパートナーと全く違ったら……」
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《山瀬まみが7ヶ月間のリハビリ生活》休養前に目撃した“スタッフに荷物を手伝われるホッソリ姿”…がん手術後に脳梗塞発症でICUに
NEWSポストセブン
自民党屈指の資金力を誇る小泉進次郎氏(時事通信フォト)
《小泉進次郎氏の自民党屈指の資金力》政治献金は少なくても“パーティー”で資金集め パーティーによる総収入は3年間で2億円、利益率は約79%
週刊ポスト
イベントキャンセルが続く米倉涼子
《新情報》イベントのドタキャン続く米倉涼子を支えた恋人の外国人ダンサー、日本を出国して“諸事情により帰国が延期”…国内でのレッスンも急きょキャンセル 知人は「少しでもそばにいてあげて」
NEWSポストセブン
小川晶市長“ホテル通い詰め”騒動はどう決着をつけるのか(左/時事通信フォト)
《前橋・小川市長 は“生粋のお祭り女”》激しい暴れ獅子にアツくなり、だんベぇ踊りで鳴子を打ち…ラブホ通い騒動で市の一大行事「前橋まつり」を無念の欠席か《市民に広がる動揺》
NEWSポストセブン
歴史ある慶應ボート部が無期限で活動休止になったことがわかった(右・Instagramより)
《慶應体育会ボート部が無期限活動休止に》部員に浮上した性行為盗撮疑惑、ヘッドフォン盗難、居酒屋で泥酔大暴れも… ボート部関係者は「風紀は乱れに乱れていた」と証言
NEWSポストセブン
元大関・貴景勝
断髪式で注目の元大関・貴景勝 「湊川部屋」新設に向けて“3つの属性の弟子”が混在する複雑事情 稽古場付きの自宅の隣になぜか伊勢ヶ濱部屋の住居が引っ越してくる奇妙な状況も
NEWSポストセブン
京都を訪問された天皇皇后両陛下(2025年10月4日、撮影/JMPA)
《一枚で雰囲気がガラリ》「目を奪われる」皇后雅子さまの花柄スカーフが話題に 植物園にぴったりの装い
NEWSポストセブン