国際情報

中国の病院 患者遺族が遺体を持ち込み抗議の院内葬儀急増中

 日本では治療費を踏み倒す患者が増えて病院経営を圧迫する問題が指摘されるが、中国ではさらに過激な問題が起きている。十分な治療を受けられなかった患者の遺族などが、患者の死亡後に病院に押し掛け、院内で葬儀をしたり遺体を玄関に置いて抗議するという行動が目立っているのだ。その背景を、ジャーナリストの富坂聰氏が解説する。
 
 * * *
 中国で、ちょっと変わった通達が全国の病院に向けて流された。発信元は国務院(内閣)の衛生部と公安部である。日本でいう厚生労働省と警察庁が合同で指導する内容だ。

 通達が発せられた目的は、病院の秩序維持。具体的には、〈違法な手段で葬儀の施設を院内に設けたり、遺体を放置するなどの行為を取り締まる〉というものだ。

 日本人が聞けば、「葬儀?」「遺体の放置?」と簡単には理解できないかもしれないが、これは実は病院内で起きる患者とのトラブルが激化して社会問題になっていることを受けて出された通達だったのである。

 日本では治療費を踏み倒す患者が増えて病院の経営を圧迫する問題が指摘されるが、中国の問題はまったく逆だ。治療費がないと分かれば門前払いを食らうことも珍しくなく、払えないと病院が判断すれば治療の内容を変えてしまうこともあるのだ。

 そのため、門前払いを食らった患者の遺族や十分な治療を受けられなかった患者の遺族などが、患者の死亡後に病院に押し掛け、院内で葬儀を行ったり遺体を玄関に置いたりして抗議するという行動が目立っているのだ。

 5月2日には、広東省で一組の夫婦とその親族が、病死した子供の遺体を病院に持ち込み入り口やエレベータホールに座り込むという事件が起きている。子供は細菌感染による軽い腎炎と診断され、入院を申し出た夫婦の願いを聞かずに退院させ、その結果、容態が急変するのに対応できずに死んでしまったのである。

 以前ならば病院側の通報があれば公安は有無を言わせず遺族たちを排除したものだが、現状は少し違う。日本並みに「民事不介入」の姿勢が目立つのである。

 このことに、もともと自分自身でもめ事を解決する中国人の性質が重なって、「手術を失敗した医師を刃物で切りつける」、「待たされ過ぎたことに腹を立てて事務員を殴る」、「医師を脅迫する」などのトラブルが絶えなくなったのである。

 門前払いも平気な病院側も問題だが、患者にも困ったものだ。

 今年、中国医師協会が行った全国114か所の病院を対象にした調査によれば、いま中国では年間平均22件の紛争が起きているという。なかでも専門性が必要な病院との訴訟では勝てる見込みが少ない患者が、実力行使に出るケースが多くなるのが避けられないらしい。

関連キーワード

トピックス

長男・泰介君の誕生日祝い
妻と子供3人を失った警察官・大間圭介さん「『純烈』さんに憧れて…」始めたギター弾き語り「後悔のないように生きたい」考え始めた家族の三回忌【能登半島地震から2年】
NEWSポストセブン
古谷敏氏(左)と藤岡弘、氏による二大ヒーロー夢の初対談
【二大ヒーロー夢の初対談】60周年ウルトラマン&55周年仮面ライダー、古谷敏と藤岡弘、が明かす秘話 「それぞれの生みの親が僕たちへ語りかけてくれた言葉が、ここまで導いてくれた」
週刊ポスト
小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン