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福島原発事故調査委員会で菅・枝野氏が醜い責任のなすり合い

 福島第一原発事故はまだ終わっていない。あの事故発生時、政権中枢はこの危機にどう対処し、失敗したか。その検証は国家にとって欠かせない作業だが、国民の生命を危険に晒した菅直人・前首相や枝野幸男・前官房長官(現・経産相)ら当時の官邸幹部は、国会の事故調査委員会では、この期に及んでも嘘と自己弁護、責任転嫁に終始する醜態を見せつけたのである。

 まず問題なのは「メルトダウン(炉心溶融)隠し」だ。

 本誌は事故直後、原子力安全・保安院の中村幸一郎・審議官が会見(3月12日)で「炉心の中の燃料が溶けていると見てよい」とメルトダウンに言及したことが官邸の怒りを買い、会見担当を“更迭”されたとスクープした。枝野氏は事故調でこう言い張った。

「国民にわかる言葉を使え、会見で発表するときには官邸に報告を入れろといっただけで、こういう言葉を使うなとか、誰を代えろとか申し上げたことはありません」

 ものは言いようである。官僚側にしてみれば、「国民にわかる言葉」とは、“メルトダウンを使うな”、「官邸への報告」とは、“官邸の許可なく発表するな”という指示と受け止めるのは当然だろう。

 しかも、枝野氏は自身を正当化するため、こんなことまで言い出した。

「私は炉心損傷の可能性は高いと早い段階で申し上げている。否定もしていない」

 ウソである証拠を示そう。事故2日後の3月13日の会見で、枝野氏はどう説明していたか。「メルトダウンが起きているのか」という記者の質問をこうたしなめたのだ。

「言葉の使い方を丁寧にやらないと。炉心の一部が、若干、炉の中で変形をする可能性は否定できない。しかしながら、(炉心)全体がメルトダウンに至るような長時間にわたって水没していない状況が続いていたという状況ではない」

 明らかな「否定」だ。

 実は、そのころ枝野氏はメルトダウンの可能性を知っていた。官邸の危機管理センターには、事故当日(3月11日)のうちに

〈24:50 燃料溶融〉

 とメルトダウンをはっきり示すERSS(※)による事故進展予測が文書で伝えられていたからだ(本誌2011年6月10日号既報)。菅前首相は事故調でその文書を「見せられた覚えがある」と認めた上で、なぜ国民に説明しなかったかについてこう証言している。

「国民への発信は官房長官にお願いしていました。その当時の考え方は、事実を隠さない。しかし、事実としてわからないことをどこまでどう表現するかは、官房長官として判断してやっておられた」

 醜い責任のなすり合いである。

 本誌の検証と枝野証言をつきあわせると、もうひとつのウソが見えてくる。

 枝野氏は事故発生当日夜の住民への避難指示の際、会見で「これは念のための指示でございます。放射能は現在、炉の外には漏れておりません」といい、翌日の1号機の水素爆発の後も、「放射性物質が大量に漏れ出すものではありません」と安全デマを流し続けた。

 しかし、避難指示の前には原子炉建屋で高い放射線量が観測されて立ち入り禁止になっていたし、水素爆発のときにはメルトダウンの可能性を十分認識していたはずなのである。

 それでも事故調では平然とこういってのけた。

「念のため発言は、念のためと思ったのでそういっただけ。その時点では、長期避難を避けられるという認識をしていた」

 こんな男が、いまも「安全は確認された」と大飯原発再稼働に動いていることは空恐ろしい。

※ERSS/緊急時対策支援システム。原発事故が発生した際、原子炉の状況を監視し、専門的なデータベースに基づいて事故の状態を判断し、その後、事故がどう進展していくかをコンピュータで解析・予測するシステム。福島第一原発事故の当日深夜には、原子力安全・保安院から首相官邸の危機管理センターにメルトダウンの予測が送られていた。

※週刊ポスト2012年6月15日号

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