国際情報

薄熙来氏肝いりの巨大スポーツ施設 わずか8年で爆破・解体

 中国共産党の最高指導部入りを目前にしながら、4月に失脚した薄熙来・前重慶市党委書記が中国東北部の遼寧省長時代、「アジアナンバーワンの豪華な室内サッカー場」を目指して、総工費8億元(約104億円)を費やして建設したスポーツ複合施設が今月初旬、爆破・解体された。この解体作業は突如として行なわれたが、「薄熙来が失脚したのを待っていたかのようだ」との声も上がっている。

 遼寧省瀋陽市の地元メディアによると、解体されたのは同市郊外にある「緑島スポーツセンター」。屋内サッカー場は人工芝だけで7億円をかけ、3万3000人の観客を収容できるほか、室内での球技施設や陸上競技場なども併設しており、総合的なスポーツ複合施設として、建設当時としてはアジア最大のスポーツ競技場だった。

 スポーツセンターの建設が決まった2001年は翌2002年のサッカーワールドカップに中国チームが44年ぶりに出場を決定。さらに2008年の北京五輪の誘致にも成功したことから、中国のスポーツ熱が異常に盛り上がった年だった。

 このため、当時の遼寧省長だった薄熙来氏の肝いりで、瀋陽にアジア最大のスポーツセンターを建設する計画が承認されたというわけだ。

 スポーツセンターは2003年に完成したが、市中心部から車で1時間以上もかかるなど立地条件が悪く、中国や国際的なスポーツイベント誘致では市内にあるスポーツ施設に太刀打ちできず、まともな大会を開催することもないまま、解体直前には「倉庫」として使用されていた。

 このため、遼寧省や瀋陽市では2、3年前から、この施設を解体し、ショッピングセンターを建設しようとの計画が持ち上がっていたが、懸念材料は施設建設に主導的な役割を果たした薄熙来氏の存在だった。薄熙来氏と言えば、2004年には遼寧省長から商務大臣に昇格し、2007年末には首都・北京と並ぶ4大直轄市のひとつ、重慶市のトップに就任。

 この1、2年では中国共産党最高指導部である党政治局常務委員会入りすることが有望視されていただけに、薄氏の肝いりで建設された件のスポーツセンターを壊すことになれば、「どのようなしっぺ返しがあるか。恐ろしい」というわけで、手をつけることができなかったという事情があった。

 ところが、薄氏は4月に党の規律に反したなどとして党政治局員や中央委員を解任され、失脚してしまったことから、後顧の憂いなく、取り壊しができることになったというわけだ。

 中国では失脚した幹部については、下手に情をかけて自身に災いが跳ね返って来ることを恐れて、「川に落ちたイヌは徹底的に叩け」というのが常識だ。今回の瀋陽のスポーツセンターの解体は、この言葉を地で行くような仕打ちといえそうだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン