ライフ

突然死も起こす肉芽腫 赤ニキビをつくる常在菌が原因と判明

 サルコイドーシスは肺、リンパ節、皮膚、眼、心臓などの臓器に炎症反応の一つである肉芽腫ができる病気で、呼吸苦、視力低下、皮膚の発疹、不整脈など場所により様々な症状がでる。

 肺のリンパ節病変が9割以上のため、健康診断のX線撮影で初めて気付くことも多い。発症のピークは男女とも20代後半で、女性はそれ以外に60代前半にもピークがあり、6~7割が自然治癒する。
 
 しかし都内の突然死の解剖結果によると、年間数名がサルコイドーシスによる不整脈が原因という報告もあり、気付いていないことも多い。肉芽腫や症状などが結核に似ていることから、欧米では長年、結核菌が原因菌と疑われていた。

 今回、原因菌特定に成功した東京医科歯科大学附属病院病理部部長の江石義信教授に話を聞いた。

「1978年に厚生省の研究班ができ、原因菌を特定するために肉芽腫病変部のウイルス、カビ、細菌などを調べてきました。その中で皮膚の常在菌で赤ニキビの原因であるアクネ菌だけが、8割の患者から培養されました。ところが、患者以外の2割からもアクネ菌が培養され、原因細菌と特定するには至りませんでした」

 病理学では長年、ドイツの細菌学者ロベルト・コッホの、結核菌など外からの細菌が原因で感染を起こすというコッホ原則が大勢を占めていた。そのため常在菌が原因で病気が起こるという説は否定された。

 そこで研究グループは、患者の病変部リンパ節をマウスに免疫し、肉芽腫内に反応する抗体を作成。その抗体がアクネ菌と結核菌のどちらに反応するかを調べたところ、アクネ菌の培養上清に特異的に反応することが分かった。

 さらに病変部リンパ節から大量にアクネ菌DNAが検出されること、患者にアクネ菌に対するアレルギー素因があることなどから、アクネ菌がサルコイドーシスの原因菌と確信したという。今回アクネ菌に対する抗体で、日本や欧米の患者の8割の症例で病変部肉芽腫内にアクネ菌が検出されたことが決定的証拠となった。

(取材・構成/岩城レイ子)

※週刊ポスト2012年7月6日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

炊き出しボランティアのほとんどは、真面目な運営なのだが……(写真提供/イメージマート)
「昔はやんちゃだった」グループによる炊き出しボランティアに紛れ込む”不届きな輩たち” 一部で強引な資金調達を行う者や貧困ビジネスに誘うリクルーターも
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
小室眞子さん“暴露や私生活の切り売りをビジネスにしない”質素な生活に米メディアが注目 親の威光に頼らず自分の道を進む姿が称賛される
女性セブン
組織改革を進める六代目山口組で最高幹部が急逝した(司忍組長。時事通信フォト)
【六代目山口組最高幹部が急逝】司忍組長がサングラスを外し厳しい表情で…暴排条例下で開かれた「厳戒態勢葬儀の全容」
NEWSポストセブン
藤浪晋太郎(左)に目をつけたのはDeNAの南場智子球団オーナー(時事通信フォト)
《藤浪晋太郎の“復活計画”が進行中》獲得決めたDeNAの南場智子球団オーナーの“勝算” DeNAのトレーニング施設『DOCK』で「科学的に再生させる方針」
週刊ポスト
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン
「漫才&コント 二刀流No.1決定戦」と題したお笑い賞レース『ダブルインパクト』(番組公式HPより)
夏のお笑い賞レースがついに開催!漫才・コントの二刀流『ダブルインパクト』への期待と不安、“漫才とコントの境界線問題”は?
NEWSポストセブン
パリの歴史ある森で衝撃的な光景に遭遇した__
《パリ「ブローニュの森」の非合法売買春の実態》「この森には危険がたくさんある」南米出身のエレナ(仮名)が明かす安すぎる値段「オーラルは20ユーロ(約3400円)」
NEWSポストセブン
韓国・李在明大統領の黒い交際疑惑(時事通信フォト)
「市長の執務室で机に土足の足を乗せてふんぞり返る男性と…」韓国・李在明大統領“マフィアと交際”疑惑のツーショットが拡散 蜜月を示す複数の情報も
週刊ポスト
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
高校時代にレイプ被害で自主退学に追い込まれ…過去の交際男性から「顔は好きじゃない」中核派“謎の美女”が明かす人生の転換点
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《死刑執行》座間9人殺害の白石死刑囚が語っていた「殺害せずに解放した女性」のこと 判断基準にしていたのは「金を得るための恐怖のフローチャート」
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
《小室圭さんの赤ちゃん片手抱っこが話題》眞子さんとの第1子は“生後3か月未満”か 生育環境で身についたイクメンの極意「できるほうがやればいい」
NEWSポストセブン
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
【独占インタビュー】お嬢様学校出身、同性愛、整形400万円…過激デモに出没する中核派“謎の美女”ニノミヤさん(21)が明かす半生「若い女性を虐げる社会を変えるには政治しかない」
NEWSポストセブン