国内

日本初 兵庫の42人集落が自力で太陽光発電装置作り「脱原発」に

 再稼働に揺れる大飯原発から約80km、兵庫県丹波市春日町・山王地区。人口はたった42人、平均年齢が60才を超える典型的な過疎地域だが、住民組織の自治会が、太陽光発電に取り組み、実現させた。これは全国で初のケースだという。

 都市部に比べて農村部の山王地区は、1人当たりの自治会費の負担が重い。公民館や農業用倉庫などを維持管理する必要があり、山王自治会では、1世帯当たり、月額5000円を徴収してきた。

「年間で1世帯6万円、ときには臨時の徴収もあって、8万円ぐらいになるときもあり、年金暮らしの年寄りが多いこの地区では、この自治会費が家計を苦しめてきたんです」(山王地区の自治会長・細田泰宏さん)

 何とかこれを軽減できる打開策はないものだろうかと考えた。

「過疎地区だけに、広大な空き地はいくらでもある。よし、太陽光でこの村を再生させよう。自治会費ぐらいはまかなえる発電装置をつくろうと、気持ちだけは、それははやりましたよ、ハイ」(細田さん)

 ネックは、太陽光発電パネルの設置費用をどう捻出するかだった。ところが、案ずるより産むが易し、30年前に行われた河川の改修工事のとき、県が集落の土地を買い上げてくれたお金が、自治会にプールされていることに気がついた。

「それでサンテックという中規模の業者を選んだのですが、費用は1700万円と格段に安くなることがわかったんです。これなら手元にも400万円残る。それで、最終的に住民全員の賛同を得ることができました」(細田さん)

 賛同を得たのは、発案から3か月が経った今年1月31日のこと。その翌月には工事を開始した。しかし、天候にめぐまれず工事が延びるなどやきもきする日々が続く。

 こうして川沿いの空き地700平方メートルに、216枚のパネルが設置され、ようやく通電したのは3月31日のことだった。

 悩みのタネだった自治会費は、この太陽光発電のおかげで、今年は各世帯半額の3万円に。来年からは0円となる。投資した1700万円は、自治会費への補填を差し引いても15年で回収できる見込みで、それ以降の発電収入はこの集落に利益となって還元される。

 この地区に住む53才の主婦はこう話す。

「自治会費も安くなって家計も助かります。それに、初めて設置したということで、この地域のイメージがよくなったんじゃないかなと思います。なんか外に向かって誇れるものがあるというだけで嬉しいですよね」

※女性セブン2012年7月12日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン