国内

海上保安庁自殺職員は外務省のスケープゴートにされたとの説

 同僚の告別式に参列した海上保安庁関係者たちは声をひそめ口にした。

「彼は、スケープゴートにされたのではないか」――。

 海上保安庁から昨年4月より外務省に出向していたK氏(享年47)が亡くなったのは、6月20日のこと。自殺だった。K氏は外務省で国際情報を統括する組織に所属。国際テロや、大量破壊兵器の拡散問題に関する情報を取り扱っていた。

 6月13日付朝日新聞のスクープ記事をきっかけにK氏の周囲は慌ただしさを増した。情報漏洩の疑いが浮上し、自ら命を絶つ直前まで、外務省の調査が続けられていたのである。

 朝日新聞の記事を皮切りに各紙が報道した内容は、中国が秘密裏に北朝鮮に軍用車両を輸出していたというもの。昨年10月、第五管区海上保安本部が、大阪港に入港したカンボジア船籍の貨物船から、輸出記録を記した目録を発見した過程などを詳しく報じた。

 複数の職員を呼び出して事情聴取を行なったが、特に、K氏に対しては複数回にわたって事情聴取が行なわれたようだ。

「それだけ何度も調査するということは、物証が上がっていないということだろう。事情聴取には、法務省からの出向検事が立ち会っていたとも聞いている。追及は相当厳しかったらしい」(別の政府関係者)

 K氏は一貫して情報漏洩への関与を否認し続けた。その一方で、周囲には「このままでは懲戒免職になる」などと漏らしていたという。

 K氏が自殺したのは、朝日新聞の記事が出てから1週間後のことだった。そして、自殺後には奇妙なことが起こっている。自殺した現場からは複数の外務省関係者宛ての遺書が見つかったというが、外務省はこの事実を公表していない。K氏を知る人物によると、遺書には「私はやっていない」といった無念の思いが綴られていたという。

 政府関係者が語る。

「情報漏洩のルートは、外務省以外にも、海保や防衛省、内調や官邸の可能性も考えられた。しかし、外務省は情報漏洩の件に関し、アメリカから強烈なプレッシャーを受けたため、まず、自省の調査を徹底的に行なわざるを得なかった。

 海保では、自分たちが調査した情報が公にならなかったことに対し、不満を持つ者もいたという。そういう事情もあり、海保から出向していたK氏に厳しい目が向けられたようだ」

 職員の自殺と遺書の有無などについて外務省に取材を申し込んだところ、「一切コメントできません」との回答だった。

 山根隆治外務副大臣は6月25日の会見で、内部調査の有無に関してはコメントを控えるとしたうえで、「(企画官を)処分しようとした事実はない」旨の発言をしている。

※週刊ポスト2012年7月13日号

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