国内

若者のガム離れに挑むロッテ「刺激への期待・壮大スケール」

 半世紀以上、右肩上がりだったガムの売り上げが減少に転じたのは2004年のこと。ガム市場で50%以上のシェアを持つロッテは、新基軸のガムで起死回生を図った。プロジェクトメンバーの3人はいかにして難局に立ち向かったのか?

 * * *
 ロッテが初めてガムを生産したのは、昭和23年(1948)。その4年後に発売された『グリーンガム』は、ロングセラー商品としておなじみだ。

 創業者自らリヤカーにガムを山積みして売り歩いたエピソードが社内で語り継がれるほど、ガムは同社の基幹商品。開発担当は花形部署となっている。だが、21世紀に入ってガム業界に危機が訪れる。2004年をピークに業界の売り上げは減少に転じ、シェアトップを独走するロッテは危機感を募らせた。

 すぐさま『フィッツ』や『アクオ』などのヒット商品を送り出したが、さらに既存の枠を越えた商品の開発に乗り出す。2010年、商品開発部のガム企画室に宮下慎、古市丈二、大峠美貴の3メンバーからなるプロジェクトが産声をあげた。

 3人に与えられたミッションは、「ガムを噛まなくなった若者を引き寄せる商品」。マーケティング調査によって20~30代の若者には、味や機能では訴求性が薄いことがわかっていた。彼らが望んでいたのは「刺激への期待感」と「壮大なスケール」。

「つまり、若い世代の感性に訴える商品が必要ということです。こうした商品は、前例がない。全てが初めての経験で、何を決めるにも社内を動かすだけで大変な作業でした」(大峠)

 最終的に採用されたのは、イナズマ級の刺激がある『ZEUS(サンダースパーク)』と、荒々しいほどの清涼感がある『ZEUS(スノーストーム)』の2種。昨年11月、スーパーやコンビニなどとの商談がスタートすると、「明日からでもすぐ売りたい」という声が殺到した。

 開発過程から参画していた営業サイドの力の入れようも半端ではなかった。この商品のために専用の陳列棚も作成した。そこに商品を並べると、大きなイナズマが見えたり、吹雪の絵になるよう工夫されていた。

「全社が一丸になったら、こんなに力を発揮するものだと感激しました」(宮下)

 今年3月の発売時、通常の商品の初回出荷数が200~300万個なのに対して『ZEUS』は700万個を超え、話題は沸騰した。気になる消費者の評価は? これは賛否両論、真っ二つに割れた。

「この刺激がくせになると大絶賛する声がある一方で、ネガティブな評価もありました。もともと100人が100人買う商品ではなく、10人の人が10回買う商品を目指していましたから。それでも、これまでガムに無関心だった人にも注目を浴び、ガムを買ってみよう、何か文句の一つもいってやりたいとまで思わせたことは、良かった。大きな自信になりました」(古市)

※週刊ポスト2012年7月13日号

あわせて読みたい

関連キーワード

関連記事

トピックス

懸命のリハビリを続けていた長嶋茂雄さん(撮影/太田真三)
長嶋茂雄さんが病に倒れるたびに関係が変わった「長嶋家」の長き闘い 喪主を務めた次女・三奈さんは献身的な看護を続けてきた
週刊ポスト
6月9日、ご成婚記念日を迎えた天皇陛下と雅子さま(JMPA)
【6月9日はご成婚記念日】天皇陛下と雅子さま「32年の変わらぬ愛」公務でもプライベートでも“隣同士”、おふたりの軌跡を振り返る
女性セブン
(インスタグラムより)
「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画…直後に入院した海外の20代女性インフルエンサー、莫大な収入と引き換えに不調を抱えながらも新たなチャレンジに意欲
NEWSポストセブン
中国・エリート医師の乱倫行為は世界中のメディアが驚愕した(HPより、右の写真は現在削除済み)
《“度を超えた不倫”で中国共産党除名》同棲、妊娠、中絶…超エリート医師の妻が暴露した乱倫行為「感情がコントロールできず、麻酔をかけた患者を40分放置」
NEWSポストセブン
第75代横綱・大の里(写真/共同通信社)
大の里の強さをレジェンド名横綱たちと比較 恵まれた体格に加えて「北の湖の前進力+貴乃花の下半身」…前例にない“最強横綱”への道
週刊ポスト
地上波ドラマに本格復帰する女優・のん(時事通信フォト)
《『あまちゃん』から12年》TBS、NHK連続出演で“女優・のん”がついに地上波ドラマ本格復帰へ さらに高まる待望論と唯一の懸念 
NEWSポストセブン
『マモ』の愛称で知られる声優・宮野真守。「劇団ひまわり」が6月8日、退団を伝えた(本人SNSより)
《誕生日に発表》俳優・宮野真守が30年以上在籍の「劇団ひまわり」を退団、運営が契約満了伝える
NEWSポストセブン
清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン
貴乃花は“令和の新横綱”大の里をどう見ているのか(撮影/五十嵐美弥)
「まだまだ伸びしろがある」…平成の大横綱・貴乃花が“令和の新横綱”大の里を語る 「簡単に引いてしまう欠点」への見解、綱を張ることの“怖さ”とどう向き合うか
週刊ポスト
インタビュー中にアクシデントが発生した大谷翔平(写真/Getty Images)
《大谷翔平の上半身裸動画騒動》ロッカールームでのインタビューに映り込みリポーター大慌て 徹底して「服を脱がない」ブランディングへの強いこだわり 
女性セブン
映画『八日目の蝉』(2011)にて、新人俳優賞を受賞した渡邉このみさん
《ランドセルに画びょうが…》天才子役と呼ばれた渡邊このみ(18)が苦悩した“現実”と“非現実”の境界線 「サンタさんを信じている年齢なのに」
NEWSポストセブン
アーティスト活動を本格的にスタートした萌名さん
「二度とやらないと思っていた」河北彩伽が語った“引退の真相”と復帰後に見つけた“本当に成し遂げたい夢”
NEWSポストセブン