国際情報

韓国 中国との国境地帯の一つを「本来は韓民族の領土」と思う

 日本と韓国には竹島の問題があるが、韓国と中国の間にも領土問題は存在する。韓国に詳しい産経新聞ソウル駐在特別記者・黒田勝弘氏がレポートする。

 * * *
 韓中間には2つの領土問題がある。1つは南部の済州島沖約150kmにある海中岩礁「離於島」をめぐる争い。もう1つは中朝国境地帯の古代史をめぐる“歴史紛争”だ。

 前者は東シナ海での経済水域の取り合いだが、韓国はすでに2003年に海洋基地を設け自己主張してきた。これに対し中国はこの海洋基地の「法的効力」を否定。付近海上での韓国側の作業に中止を要求している。

 後者に関しては、韓国は古代国家の高句麗や渤海のルーツを韓民族とし、その支配領域に“郷愁”を抱いてきた。しかし近年、中国は高句麗や渤海の歴史を「中国の地方史」と位置付け、中国支配圏に囲い込みを始めた。最も新しい動きである「万里の長城」の距離延長もそうだ。

 最近の発表では長城の距離は東西に倍以上に拡大している。これだと中朝国境地帯や朝鮮半島まで長城の南となり、中国支配圏に組み込まれたも同然である。

 両国がこの地域の歴史にこだわるのは、問題が領土紛争含みだからだ。韓国は国境地帯の延辺朝鮮族自治州など「本来は韓民族の領土」と思っている。この地を中国領にした19世紀末、日清戦争後の日本と清の「間島協約」は無効、と今も叫んでいる。

 チベットやウイグル、モンゴル族など少数民族問題で頭の痛い中国は、この地に対する韓国の民族的郷愁を極度に警戒している。

 ただ韓国は、尖閣問題をめぐる日本の“領土熱気”が韓国つまり竹島問題に向かうことを恐れている。とくにマスコミは石原都知事に対しては「うさんくさい極右煽動政治家」などと終始、全面否定で警戒が強い。

 その結果、「独島問題で必要以上に日本の右翼を刺激し、彼らの立場を有利にしてしまうわれわれの行動も注意しなければならない」という論評が出ている(左派系「ハンギョレ新聞」5月11日付)。

 珍しく自らの過剰な“独島民族主義”への反省である。これも石原効果か? 韓国では今や「石原―橋下」が日本を動かす最大の関心人物になりつつある。

※SAPIO2012年7月18日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

小磯の鼻を散策された上皇ご夫妻(2025年10月。読者提供)
美智子さまの大腿骨手術を担当した医師が収賄容疑で逮捕 家のローンは返済中、子供たちは私大医学部へ進学、それでもお金に困っている様子はなく…名医の隠された素顔
女性セブン
吉野家が異物混入を認め謝罪した(時事通信、右は吉野家提供)
《吉野家で異物混入》黄ばんだ“謎の白い物体”が湯呑みに付着、店員からは「湯呑みを取り上げられて…」運営元は事実を認めて「現物残っておらず原因特定に至らない」「衛生管理の徹底を実施する」と回答
NEWSポストセブン
北朝鮮の金正恩総書記(右)の後継候補とされる娘のジュエ氏(写真/朝鮮通信=時事)
北朝鮮・金正恩氏の後継候補である娘・ジュエ氏、漢字表記「主愛」が改名されている可能性を専門家が指摘 “革命の血統”の後継者として与えられる可能性が高い文字とは
週刊ポスト
英放送局・BBCのスポーツキャスターであるエマ・ルイーズ・ジョーンズ(Instagramより)
《英・BBCキャスターの“穴のあいた恥ずかしい服”投稿》それでも「セクハラに毅然とした態度」で確固たる地位築く
NEWSポストセブン
箱わなによるクマ捕獲をためらうエリアも(時事通信フォト)
「箱わなで無差別に獲るなんて、クマの命を尊重しないやり方」北海道・知床で唱えられる“クマ保護”の主張 町によって価値観の違いも【揺れる現場ルポ】
週刊ポスト
火災発生後、室内から見たリアルな状況(FBより)
《やっと授かった乳児も犠牲に…》「“家”という名の煉獄に閉じ込められた」九死に一生を得た住民が回想する、絶望の光景【香港マンション火災】
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン