国際情報

CIA ダライ・ラマ側に対中闘争の資金と武器の援助していた

 中国人民解放軍が1949年にチベットに侵攻し、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世を事実上の軟禁状態にし、監視下においていた際、米中央情報局(CIA)がチベット支援のため、ダライ・ラマ側に年間18万ドル(当時のレートで約6480万円)と軽火器を提供するとともに、チベット兵に軍事訓練などの支援を行なっていたことが分かった。米ニューヨークを拠点とする中国専門情報Webサイト「多維新聞網」が報じた。

 米政府が1959年3月のダライ・ラマのインド亡命後、資金援助などを行なっていたことは知られているが、それ以前にもCIAが資金とともに軽火器などを提供していたとの事実が明らかになるのは初めてだ。

 それによると、ダライ・ラマの密使が1951年、ニューデリーの米国大使館とカルカッタ(現在のコルカタ)の米国領事館を訪れ、当時独立国だったチベットが中国共産党に対抗するために、ダライ・ラマへの支援提供や武器の援助を要請した。

 これに対して、東西冷戦下で、共産主義のアジア各地への波及を恐れていた米政府はダライ・ラマへの資金援助などを了承するとともに、機関銃などの軽火器を提供することを決めた。さらに、チベット国内のほか、米国の米軍基地でチベット兵に軍事訓練を行なうことも約束した。

 これらの交渉はダライ・ラマの2番目の兄、ギャロ・トンドゥプ氏が担当していたが、ダライ・ラマにとって交渉結果は事後承諾の形で報告されており、いまでも平和主義者で、非暴力主義で知られるダライ・ラマが当時、軍事闘争路線を承認したというわけではなさそうだ。

 CIAがチベット軍を援助し、中国人民解放軍相手のゲリラ戦を支援する作戦は「セイント・サーカス(St. Circus)」とのコードネームで呼ばれ、チベット内の2か所の基地で3000人のチベット兵を武装させて軍事訓練を実施し、活動資金も提供したという。

 1959年にダライ・ラマがインド亡命した後も、軍事的支援は続けられ、訓練は中国国境に近いネパール北西部の拠点を中心に行われた。また、CIAはゲリラ戦を行なうチベット人兵士259人を米コロラド州の基地に連れて行って軍事訓練を実施したという。訓練のプログラムは殺人、射撃、誘拐、爆撃、爆弾製造などで、訓練を受けたチベット兵は神出鬼没に中国領内に現れ、人民解放軍部隊を相手にかなりのダメージを与えたとされる。

 ところが、これらの資金提供や軍事援助は1969年に突然中止となる。当時のニクソン政権の大統領補佐官だったヘンリー・キッシンジャー氏が対中関係改善を模索していた時期と符合しており、ニクソン大統領の決断だったとみられる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/小倉雄一郎)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
2024年末、福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして平原政徳容疑者が逮捕された(容疑者の高校時代の卒業アルバム/容疑者の自宅)
「軍歌や歌謡曲を大声で歌っていた…」平原政徳容疑者、鑑定留置の結果は“心神耗弱”状態 近隣住民が見ていた素行「スピーカーを通して叫ぶ」【九州・女子中学生刺殺】
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
池田被告と事故現場
《飲酒運転で19歳の女性受験生が死亡》懲役12年に遺族は「短すぎる…」容疑者男性(35)は「学校で目立つ存在」「BARでマジック披露」父親が語っていた“息子の素顔”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
9月6日に悠仁さまの「成年式」が執り行われた(時事通信フォト)
【なぜこの写真が…!?】悠仁さま「成年式」めぐりフジテレビの解禁前写真“フライング放送”事件 スタッフの伝達ミスか 宮内庁とフジは「回答は控える」とコメント
週刊ポスト
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン