国内

大飯再稼働も供給量増えず 関電は火力発電止めて調整してた

 政府はこれまでに大飯原発3、4号機の再稼動に踏み切ったが、『週刊ポスト』がこれまで再三指摘してきたように、原発を再稼働しなくても電力が足りることは間違いない。大飯原発3号機の再稼働によって、皮肉にもそれが証明されてしまった。

 実は、大飯原発3号機が再稼働しても、関電の電力供給量は「全く増えていない」のだ。 たとえば、節電が開始された7月2日の関電のピーク時供給力は2470万kWだった。

 関電は、大飯3号機再稼働による供給力の増加を原子力118万kW、揚水発電(※注)53万kWの計171万kWと公表している。ならば大飯原発3号機がフル稼働した7月10日以降は、単純に計算しても2640万kW以上の供給力があってしかるべきだろう。

 しかし、3号機のフル稼働後も関電の最大供給力はほとんど変化していない。7月10日は2441万kW、11日は2520万kWである。

 このおかしな事態の背景には、国民を欺く重大な裏切り行為がある。関電は大飯3号機を再稼働した後、一部の火力発電所を止めることによって自ら供給力を調整していたのだ。

 たとえば11日は赤穂発電所2号機(兵庫県赤穂市)や海南発電所3号機(和歌山県海南市)など4プラントの運転を止めていた。12日も御坊発電所3号機(和歌山県御坊市)など4機を停止させている。

 関電も「検査作業で止まっている姫路第二発電所以外は、検査やトラブルではなく需給状況を見て停止させている」(報道グループ)と認めた。つまり、原発再稼働でできた余裕で、燃料コストのかさむ火力発電所を止めていたというわけだ。

 関電は、「でんき予報」と称して管内の電力使用率を公開している。しかし、自分たちの都合で供給力を調整しているために、大飯原発再稼働後も使用率は一向に低下しておらず、再稼働前と同じ80%台を推移している。これでは国民が関電に不信感を覚えるのも当然である。

 節電の根拠となった需給予測そのものの嘘も露呈しはじめた。関電は5月19日に「今夏の需給見通し」を発表しており、この中で7月前半の最大電力需要を2757万kWとしていた。しかし実際は10日の2211万kWが最大で、ほとんどの日の最大電力は2100万kW以下だ。

 想定需要と実際の需要がここまで食い違ってしまったのは、決して節電努力だけが理由ではない。想定需要は、観測史上最大の猛暑である2010年を基準にし、あらかじめ不当に高く見積もられていたのである。

 各電力会社は5月時点での本誌取材に対し「今夏の気温については想定できないため」(関西電力広報室)などとその基準の正当性を主張していた。しかし、7月ともなれば事情は変わってくる。気象庁の1か月予報(7月14日~8月13日)によれば、今夏の気温は平年並みとなる可能性が高い(平年より低い30%、平年並み30%。平年より高い40%)。需要予測もこれに合わせて修正すべきだろう。

【※注】揚水発電/夜間など電力需要の少ない時間帯の余剰電力を使用し下部貯水池から上部貯水池へ水を汲み上げ、電力需要が大きくなる時間帯に水を導き落とす水力発電方式

※週刊ポスト2012年8月3日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

長男・泰介君の誕生日祝い
妻と子供3人を失った警察官・大間圭介さん「『純烈』さんに憧れて…」始めたギター弾き語り「後悔のないように生きたい」考え始めた家族の三回忌【能登半島地震から2年】
NEWSポストセブン
古谷敏氏(左)と藤岡弘、氏による二大ヒーロー夢の初対談
【二大ヒーロー夢の初対談】60周年ウルトラマン&55周年仮面ライダー、古谷敏と藤岡弘、が明かす秘話 「それぞれの生みの親が僕たちへ語りかけてくれた言葉が、ここまで導いてくれた」
週刊ポスト
小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン