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野田政権が進める「官民ファンド」は新たな天下り先との指摘

 野田佳彦政権が「日本再生戦略」という報告書のとりまとめを急いでいる。その中には、各紙も突っ込んでいない重要なポイントあるという。それは各省庁の「官民ファンド」だ。東京新聞・中日新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏が解説する。

 * * *
 官民ファンドというのは、国の信用をバックにした公的資金と民間からの資金を合わせてファンドにして、さまざまな投融資事業をする仕組みだ。財務省と経済産業省が設立した産業革新機構をはじめ、国土交通省が主導した不動産市場安定化ファンド、農林水産省が今秋設立を目指している農林漁業成長産業化支援機構など、いまや霞が関では各省自前のファンドづくりが大流行になっている。

 なぜ、いま官民ファンドかといえば、国は巨額の財政赤字を抱えて新たな事業を手がける余裕がない。そこで民間からの資金を集めて(見た目だけでも)公的な事業を手がければ、わずかな元手で大きな仕事ができ、しかも天下り先も開拓できるからだ。

 民間にカネを出させる手前、使い途は一応、専門家の意見を聞く体裁をとっているが、実態は役所の意向が反映される。たとえば、いまや1兆9000億円規模に肥大化した産業革新機構は専務執行役員に財務省と経産省のキャリア官僚が天下っている。

 そもそも政府が乗り出さなくても、本当に市場が再生を求めるような企業であれば、民間資金が流れていく。それがビジネスチャンスになるからだ。民間は投資に失敗すれば市場から退場を迫られるが、官僚は失敗したところで失業しない。そんな官僚に「次の成長産業」を見抜く力があるわけもない。むしろ官民ファンドがある分、民間ファンドの育成を阻害する。

 いまや野田政権は増税だけでなく、成長を目指す政策立案も完全に官僚の手のひらに乗ってしまった。

※週刊ポスト2012年8月3日号

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