スポーツ

柔道五輪代表・福見友子 中学時代は3軒の道場をはしごした

 いよいよ始まるロンドン五輪。金メダル獲得の期待がかかる女子柔道で、先陣を切るのが48kg級の福見友子選手(27才)だ。

 福見は1985年6月26日、銀行員の父・茂さんと早苗さん(56才)の次女として茨城県土浦市に生まれた。6才上の兄、3才上の姉がいる。しかし、1988年6月、福見が3才の誕生日を迎える直前、父・茂さんが交通事故で亡くなってしまう。37才の早過ぎる死だった。

 母・早苗さんは高校時代、ハンドボール部に所属し、インターハイに出場した経験を持つ。それゆえ自分の子供たちが、インターハイに出場する姿を夢に描いていた。競技は何でもよかったが、福見は同じ年代の子供たちと比べても背が低く体の線が細い。新聞のスポーツ欄で柔道の道場を探し出し、福見を入門させた。

「保育園である程度スポーツ万能であることはわかっていました。チビでヤセな友でも、体重によって階級が分かれる柔道なら活躍できるんじゃないかと思ったんです」

 柔道の道場といえば、いまも昔も男社会だ。練習に参加するのは男子が中心で、指導者は男性がほとんど、応援に来るのも父親が圧倒的だった。そんな道場で、福見が寂しい表情を見せる瞬間があった。

「まだ小学校に上がったばかりのころのことですが、父性に触れる機会がないために、道場や試合場ではお父さんがたをジッと見つめていたんです。自宅では私に父親がいない寂しさを訴えることはありませんでしたけど、男性に囲まれるとどうしても感傷的になってしまうのでしょう。

 私は『お父さんは友のすぐ近くにいて、一緒に柔道を戦ってくれるんだから、いちばんすごいのよ』と伝えました。するとポーッと頬を赤らめながら『うん』と嬉しそうに頷いて、相手に挑んでいくんです」

 母の勧めで始めた柔道だが、福見は「柔道をやめたい」とは一度もいったことがなかった。練習の日は早苗さんが車で福見を道場まで送っていた。福見が小学生のころ、どうしても仕事が長引いて帰宅が5分ほど遅れたことがある。すると、福見は柔道着に着替えて玄関先で待っていた。

「私が友に謝るとこういうんです。『お母さん、私は柔道が大好きなの。だから練習がある日は遅れずに帰ってきて』って」

 福見は中学生になると3軒の道場をはしごするほど柔道に没頭し、中学1年生で48kg級の県内大会決勝に進出。絞め落とされて一本負けを喫したが、直後の行動が周囲を驚かせた。意識を取り戻した福見は、敗戦を理解できず、立ち上がると再び闘争本能をむき出しにして相手に向かっていったのだ。

 根っからの負けず嫌いなのだろう。そんな福見に対し、母は「全中(全国中学校体育大会)を見に行こう」と誘う。ふたりで夜行列車に乗り、開催地の秋田に向かう。会場で48kg級決勝を見届けたあと、福見が口にした一言が早苗さんは忘れられない。

「お母さん、なんで私はここ(観客席)にいるんだろう? どうして畳で試合をしていないのかな。来年は絶対に出場するからね」

 実際、その翌年に福見は全中に出場。準優勝し、中学3年生時にはついに日本一となる。

「優勝後に、友が『お母さんと二人三脚でやってきた』と報道陣に話したようなんです。普段はそんなことをいわない子なので…嬉しかった」(早苗さん)

※女性セブン2012年8月9日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

園遊会に出席された愛子さまと佳子さま(時事通信フォト/JMPA)
「ルール違反では?」と危惧する声も…愛子さまと佳子さまの“赤色セットアップ”が物議、皇室ジャーナリストが語る“お召し物の色ルール”実情
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
「日本ではあまりパートナーは目立たない方がいい」高市早苗総理の夫婦の在り方、夫・山本拓氏は“ステルス旦那”発言 「帰ってきたら掃除をして入浴介助」総理が担う介護の壮絶な状況 
女性セブン
9月に開催した“全英バスツアー”の舞台裏を公開(インスタグラムより)
「車内で謎の上下運動」「大きく舌を出してストローを」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサーが公開した映像に意味深シーン
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(クマの画像はサンプルです/2023年秋田県でクマに襲われ負傷した男性)
《コォーってすごい声を出して頭をかじってくる》住宅地に出没するツキノワグマの恐怖「顔面を集中的に狙う」「1日6人を無差別に襲撃」熊の“おとなしくて怖がり”説はすでに崩壊
NEWSポストセブン
今年の”渋ハロ”はどうなるか──
《禁止だよ!迷惑ハロウィーン》有名ラッパー登場、過激コスプレ…昨年は渋谷で「乱痴気トラブル」も “渋ハロ”で起きていた「規制」と「ゆるみ」
NEWSポストセブン
「原点回帰」しつつある中川安奈・フリーアナ(本人のInstagramより)
《腰を突き出すトレーニング動画も…》中川安奈アナ、原点回帰の“けしからんインスタ投稿”で復活気配、NHK退社後の活躍のカギを握る“ラテン系のオープンなノリ”
NEWSポストセブン
真美子さんが完走した「母としてのシーズン」
《真美子さんの献身》「愛車で大谷翔平を送迎」奥様会でもお酒を断り…愛娘の子育てと夫のサポートを完遂した「母としての配慮」
NEWSポストセブン
11歳年上の交際相手に殺害されたとされるチャンタール・バダルさん(21)千葉県の工場でアルバイトをしていた
「肌が綺麗で、年齢より若く見える子」ホテルで交際相手の11歳年下ネパール留学生を殺害した浅香真美容疑者(32)は実家住みで夜勤アルバイト「元公務員の父と温厚な母と立派な家」
NEWSポストセブン
アメリカ・オハイオ州のクリーブランドで5歳の少女が意識不明の状態で発見された(被害者の母親のFacebook /オハイオ州の街並みはサンプルです)
【全米が震撼】「髪の毛を抜かれ、口や陰部に棒を突っ込まれた」5歳の少女の母親が訴えた9歳と10歳の加害者による残虐な犯行、少年司法に対しオンライン署名が広がる
NEWSポストセブン
新恋人A氏と交際していることがわかった安達祐実
《新恋人発覚の安達祐実》沈黙の元夫・井戸田潤、現妻と「19歳娘」で3ショット…卒業式にも参加する“これからの家族の距離感”
NEWSポストセブン
大谷と真美子夫人の出勤ルーティンとは
《真美子さんとの出勤ルーティン》大谷翔平が「10万円前後のセレブ向けベビーカー」を押して球場入りする理由【愛娘とともにリラックス】
NEWSポストセブン
「秋の園遊会」でペールブルーを選ばれた皇后雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA)
《洋装スタイルで魅せた》皇后雅子さま、秋の園遊会でペールブルーのセットアップをお召しに 寒色でもくすみカラーで秋らしさを感じさせるコーデ
NEWSポストセブン