スポーツ

体操の高額機器カネ事情 床1606万、あん馬93万、平行棒98万

 ロンドン五輪でメダルが期待される体操の田中理恵選手。オリンピック選手に育つまでには、経済面をはじめ様々な苦労があったという。一体どんな苦労があったのか――作家の山藤章一郎氏がリポートする。

 * * *
 日本体操協会理事・森末慎二氏の意見。

「いま、体操のスポンサーをする企業はありません。それでも日本が強いのは、(田中理恵選手の父)田中章二先生のような小さな集団のがんばりがあるからです。全国にちらばるこの体操部、体操クラブが田中3兄妹や内村航平の基本をつくり、そこから、高校、大学を経てオリンピックをめざすのです。

 スポーツクラブの〈体操〉は絶対儲かりません。ゆかだけで数千万円します。器具にカネがかかりすぎるのです。さらに、選手の育成年齢がかぎられ、寿命が短い。体操クラブに、30代以上は所属していません。

 水泳クラブならプールと水と水着があればいい。年齢も幼児から80代までを相手に営業できます」

 やる気、カネ、育成期間――苦戦苦闘が立ちはだかる。

 千葉県松戸市に〈セノー〉という、体育施設の機器を製造販売する会社がある。1964(昭和39)年開催の東京オリンピックで製品が採用されて以降、ここが体育に関する機器をほぼ独占している。一時、負債をかかえ、全株式79億円で〈ミズノ〉に買収されたが、跳び箱、平均台……全国の体育館、学校を〈セノー〉製品が埋める。しかも使用頻度によってたえず新しいものと替えなくてはいけない。

 海外の比較的安価な機器もあるが、日本体操協会が認めているのは〈セノー製〉。〈全日本〉などの大きな社会人大会や、〈日体大〉〈ナショナルトレーニングセンター〉などの体操の本拠地もここの製品を使用する。同社カタログより。

 端数切り捨て。(税込)
 ゆか:1606万円
 あん馬:93万円
 跳馬:71万円
 平行棒:98万円
 平均台:70万円
 吊り輪:82万円 以上――。

 一、体操選手を育てる施設は経済的負担に四苦八苦している。
 一、子どもは幼児期より休みない訓練が必要で、選手生命は短い。
 一、卒業後の職は、運がよくて先生かコーチしかない。

 森末氏に、訊く。

 ――今後、どうしたらいいですか。

「うーん、どうもできないですね」

※週刊ポスト2012年8月3日号

関連キーワード

トピックス

俳優の水上恒司が真剣交際していることがわかった
水上恒司(26)『中学聖日記』から7年…マギー似美女と“庶民派スーパーデート” 取材に「はい、お付き合いしてます」とコメント
NEWSポストセブン
AIの技術で遭遇リスクを可視化する「クマ遭遇AI予測マップ」
AIを活用し遭遇リスクを可視化した「クマ遭遇AI予測マップ」から見えてくるもの 遭遇確率が高いのは「山と川に挟まれた住宅周辺」、“過疎化”も重要なキーワードに
週刊ポスト
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト