家電量販店の業界再編の動きが激しさを増している。
5月にそれまで業界5位だったビックカメラが同じく7位のコジマを買収したかと思えば、7月13日には業界トップのヤマダ電機がベスト電器を傘下に収めた。1990年代後半から業界トップを走ったコジマ、2000年代に急成長したベスト電器が買収されたことは、この業界の栄枯盛衰の厳しさを物語る。
買収劇の背景にあるのは、家電小売市場の縮小だ。とりわけ大きな痛手となっているのが、家電量販店のドル箱だった液晶テレビの不振である。
家電販売業界に詳しいジャーナリストの河野重年氏が語る。
「大画面テレビ特需に地デジ特需が続き、薄型テレビの国内出荷台数は2010年に過去最大の2518万台を記録した。これが2011年には1982万台に急減。販売価格の下落も続いている。今年3月に家電エコポイントが廃止になったことも追い打ちをかけた」
日本政策投資銀行が昨年11月に発表した予測によれば、家電小売業の市場規模は2010年度の8兆5000億円から2012年度には約7兆円にまで縮小。このうち家電量販店のシェアは年々上昇し、7割以上を占めている。テレビだけでなく、エアコンやパソコンの価格下落にも歯止めがかからない状態で、今後市場規模が回復する見通しは立たない。
相次ぐ買収劇で顕在化した家電量販店の熾烈な生存競争。当然のことながらその裏には各社の思惑がある。
まず、コジマを買収したビックカメラの狙いは第一にスケールメリットにあるという。
「ビックカメラは東京や大阪など大都市の主要駅前に売り場面積1万平方メートル級の大型店を展開しているが、そのために大量出店によって販売を底上げする戦略が取れない。一方、コジマは全国の幹線道路沿いや住宅地など郊外を中心に、3000平方メートル程度の中規模店が主力。都心型と郊外型でお互いを補完する関係にある」(前出・河野氏)
コジマの1441億円の第三者増資を引き受け、実質的な買収を行なったビックカメラは、これでグループ売上高が約9800億円となり業界2位に躍り出た。
売り上げ規模が拡大すれば、メーカーからの購入数量を増やして安く仕入れるというスケールメリットは当然大きくなる。売上高で独走するヤマダ電機に対抗するためにも、規模拡大による価格競争力の強化は必須だったのだ。
※週刊ポスト2012年8月10日号