ライフ

子供がボール遊びで窓ガラス破損 親には注意・監督責任あり

 竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「子どもが窓を割りました。謝罪はどのようにすればよいでしょう」と以下のような質問が寄せられた。

【質問】
 子どもがボール遊びをしていた時のことです。子どもがボールを投げ損ねたために、近所の家の窓に当たり、窓ガラスを割ってしまいました。子どもはすぐに謝りに行ったそうなのですが、許してもらえなかったようです。このような場合の、謝罪の仕方などについてアドバイスをください。

【回答】
 ボール遊びで窓ガラスを割ったのなら、不注意があったといわざるを得ません。子どもの責任ですが、民法では自己の行為の責任を弁護するに足りる知能(責任能力)がない未成年者は賠償責任がなく、親権者である親が法定監督義務者として責任を負います。

 小学生以下は、物事の善悪を分かって法的責任の有無を知ることは無理で、責任能力がないと解されるのが普通です。監督義務者が監督を怠らなかった時には免責されますが、親に関して、実際にこの免責が認められることは極めて稀です。

 子どもに責任能力があっても、安心できません。最高裁は、未成年者に責任能力があっても、監督義務者の義務違反と未成年者の不法行為で生じた結果との間に相当な因果関係があるときは、監督義務者につき民法第709条に基づく一般の不法行為が成立するとしています。未成熟な子どもが社会人に成長する上で、親が子の監督義務を負うのは当然なのです。

 たとえば、普段から野球好きの中学生が小学校校庭でキャッチボールをし、それたボールが小学生に当たって死亡させた事件で、父親は危険のないボールを使用して野球をするように十分な注意を与えておらず、小学生がいる付近では格別気を遣って監督すべき義務があるのに怠ったとして、責任を認めた下級審判決があります。

 ご質問の場合も同様に、子どもがボール遊びをしていることを知っていれば、近所の迷惑になる場所では遊ばないように注意する義務があるといえます。当然、親のあなたの責任は回避できません。

 となれば、子どもとともに謝罪し、ガラス代を弁償した上で、今後は危険なボール遊びをさせないことを約束するしかないと思います。それでも許されないのであれば、致し方ありません。

※週刊ポスト2012年8月17・24日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
一般家庭の洗濯物を勝手に撮影しSNSにアップする事例が散見されている(画像はイメージです)
干してある下着を勝手に撮影するSNSアカウントに批判殺到…弁護士は「プライバシー権侵害となる可能性」と指摘
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン