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ネット右翼 ネット利用者の3.1%で年収800万円以上は29%

「男性84%、女性16%」 「マスコミの情報は偏っていて信用できない 84%」

 普段はパソコンのモニターの向こう側にいて、なかなか実態を掴むことができないネット右翼(ネトウヨ)について、こんな計量的な分析を行なった貴重な研究がある。

 大阪大学大学院の辻大介・人間科学研究科准教授らが2008年に発表した『インターネットにおける「右傾化」現象に関する実証研究』で、大手ネットリサーチ会社・マクロミルのモニター会員約1000人を対象に実施した調査である。

 辻氏が語る。

「いわゆる“ネット右翼”の存在については、いくつもの論考がありましたが、その中で実際にネット利用者を調査してその実態を分析した研究は極めて少なかった。そこで、彼らがどんな政治的態度を持ち、どんな属性にあるのかを分析しようと考えたのです」

 調査は20~44歳の男女に対し行なわれ、集まった1030サンプルの中から信頼性を欠く32を除いた998サンプルが有効回答となった。「あなたはふだん、1日にどれくらいテレビを見ていますか?」など40項目の質問に答える形式だ。

 その結果、以下の3条件を定義とした場合の「ネット右翼的な層」は、全体の1.3%だったという。

【辻氏が調査において「ネット右翼的な層」とした定義】
◆下記の【A】【B】【C】すべての条件を満たした層を「ネット右翼的な層」とすると1.3%
◆【B】の条件を「(過半数の)3項目以上に賛成」に緩和した場合の「ネット右翼的な層」は3.1%

【A】:「韓国」「中国」いずれに対しても、「あまり」「まったく」親しみを感じないと回答

【B】:「首相や大臣の靖国神社への公式参拝」「憲法9条1項の改正」「憲法9条2項の改正」「小中学校の式典での国旗掲揚・国歌斉唱」「小中学校での愛国心教育」という5項目すべてに「賛成」「やや賛成」と回答

【C】:直近1年の間に、政治や社会の問題について「自分のホームページに、意見や考えを書きこんだ」「他の人のブログに、自分の意見や考えをコメントした」「電子掲示板やメーリングリスト等で議論に参加した」という3項目いずれかに、したことが「ある」と回答

「1000人のモニターはインターネットのヘビーユーザーが多いという偏りが考えられるため、実際のネット利用者におけるネット右翼的な層は、1%を下回ると推測されます。ただし、少し条件を緩和すると、その割合は3.1%となりました。いずれも全体からすれば小さな数字ですが、この人たちが様々な場面で活動し、目立っているものと考えられます」(辻氏)

 では、彼らはどんな人たちなのか。以下、「少し条件を緩和」した、3.1%のネトウヨたちに関する分析である。

 まず、冒頭で記した通り、ネトウヨには男性が極めて多く、84%を占めた。年齢層は、

・20代前半:16%
・20代後半:29%
・30代前半:13%
・30代後半:23%
・40代前半:19%

 と、有意な差は見られなかったという。ネトウヨは、どの年代にもまんべんなくいるらしい。また、彼らの学歴・年収についてはネット上で低学歴、低収入と指摘する書き込みが多く見られるが、実態は高学歴、高収入も一定の割合でいた。

【ネトウヨ層・そうでない層の世帯年収】
世帯年収/400万円未満/400万~800万円/800万円以上/わからない、答えたくない
ネット右翼的な層/32%/35%/29%/3%
そうではない層/25%/41%/17%/17%

 興味深いのは、ネットの利用形態である。1週間のネット平均利用時間については、ネット右翼的な層が1419分、そうではない層が1322分と大きな差はないが、「2ちゃんねるを読む」「2ちゃんねるに書き込む」といった調査項目で、ネトウヨのほうが明らかに利用率が高いという結果が出た。

【ネットのサービスの「月1回以上」利用率 】
ネットサービス/ネット右翼的な層/そうではない層
オンラインゲーム/35%/21%
メッセンジャー/23%/21%
2ちゃんねるを読む/68%/45%
2ちゃんねるに書き込む/35%/9%

 上の表にはないが、ネトウヨは2ちゃんねるについて「ほぼ毎日読む 39%」「ほぼ毎日書き込む 16%」という数字も出た。

 また、「日本のマスコミの情報は偏っていて信用できない」について「そう思う」「まあそう思う」と答えたのは実に84%。ネトウヨ以外の層では63%だったのと比べると、開きがある。

「いわゆるネトウヨ層は、2ちゃんねるを中心に活動していると言われてきましたが、それが数字で裏付けられました。マスコミに対する不信については、例えば2ちゃんねるではネトウヨ層による朝日新聞などの左派的な言説へのバッシングが繰り広げられています。それらは、思想信条の対立という以上に、情緒的な不信感や攻撃性の表われと考えられます」(辻氏)

 さらに調査では、「ネトウヨ層のほうが、署名運動や献金など、リアルな面でも行動している割合が高い」「約1000人のサンプル全体を見ると、愛国心が高い人が必ずしも“嫌韓嫌中”ではないが、ネトウヨ層はそれらが同居している」などの結果が出ている。

 辻氏は、「あくまで憶測の域は出ないが」と前置きした上で、ネットの現状を観察していると、2008年の論文発表時よりもネトウヨ層は増えている可能性があるという。

※SAPIO2012年8月22・29日号

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