夏はナマ脚、という定番が変わりつつある。春頃から流行の兆しを見せていた「TATTO(タトゥー)ストッキング」がこの夏、爆発的人気を呼んでいるのだ。昨年にオープンした原宿のレッグウェア中心のセレクトショップ「AVANTGARDE(アバンギャルド)」では、今年に入ってタトゥーストッキングの売上が急増、開店時の約8倍に増えているという。通販事業も好調で、昨年同月比5倍の勢い。地方からの問い合わせも多いという。
タトゥーストッキングとは、タトゥーによく使われるトライバル柄をはじめ、絵や文字などがプリントされ、“タトゥーのように見える”ストッキングのこと。足元にワンポイントだけ入ったものから、両足全体に大胆にプリントされたものまで、種類は様々だ。ストッキング自体は透ける素材でできているものが多く、遠目からは実際にタトゥーを入れているようにも見える。
東京・原宿を歩く女の子たちがこぞって入っていく店を記者も訪れた。この店の一番人気はディズニー柄だという。大人向けにと、ハートやダイヤなど、シンプルな柄も見せてくれた。“タトゥー”という響きとは裏腹に、求められているのは可愛らしさやファッション性のよう。洗濯しても落ちないが「もったいないので伝線には気をつけてください」と店員さん。値段は1枚1000円~2000円程度だ。
夏なのに、なぜストッキングなのか。なぜタトゥーなのか。ファッションジャーナリストの宮田理江さんに聞いた。
「シンプルな着こなしになりがちな夏だからこそ、アイキャッチーなタトゥーストッキングを合わせれば、おしゃれな見た目に仕上げやすいんです」と説明した上で、こう分析する。
「ここ数年、レギンスの定着にともない、レッグウェアの見直しが進みました。が、レギンスが普及しすぎたことで、“レギンス飽き”が起きてきた。結果、ひと味違うデザイン性が求められるようになったのです。タトゥーストッキングは柄のバリエーションが広がり、アートを身につけるような楽しみがある。その上、デザインにもよりますが、脚に柄があると視線を散らしてくれるので、脚を出しても気にならない人も多いようですね」
実際、上記店員さんによると、脚が細く見える気がすると、タトゥー柄を買っていく若い女性もいるようだ。
もう一つ、昨今の懐事情も影響していると宮田さん。
「おしゃれに割ける予算が寂しくなるなか、手軽な投資で見た目の印象を変えたいという需要が高まっています。色やデザインの選択肢が増えたストッキングが、それにマッチしたのではないでしょうか」
ちなみに男性の意見はどうだろう。ファッション業界で働く30代男性に聞いた。
「タトゥー柄、いいですよね。オッと思って脚を見ちゃうんだけど、そういうストッキングなんだから、見てもやましくないというか。柄にばっかり目が行って、太さも気にならないし。スカートの裾からチラッとタトゥーが見え隠れするの、あれが一番いいです(笑い)。僕はもともとストッキング派なんです。やっぱり、ストッキングをはいている脚のほうが綺麗ですから」