テレビがつまらなくなったといわれて久しい。同じ顔ぶれのタレントがバカ騒ぎに興じるバラエティや、代わり映えのしない娯楽情報番組には飽き飽きしている読者も少なくないだろう。だが、視聴率こそ高くはないが、珠玉といえる掘り出し物の番組はまだまだある。テレビ業界人もお勧めする紀行・教養番組を3つ紹介しよう。
【1】「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」(テレビ東京:19時00分~20時54分。土曜スペシャルで不定期)
蛭子能収、太川陽介の2人に、マドンナと呼ばれる女性ゲストを加えた3人が、3泊4日の日程で路線バスでゴール目的地を目指す。「自由奔放な蛭子のゆるキャラとしっかり者の太川のやり取りが絶妙」と評価が高い。旅をベースにした土曜スペシャル(次回は8月18日「天空の宿に泊まろう!2~にっぽんの山小屋物語~」)でも、視聴率10%超の“ドル箱”シリーズだ。
「蛭子さんのキャラクター・ショーとして固定ファンがついています。漁師町でも平気でお子様ランチやカツカレーを食べ、スタッフも誰も注意しない。たまに郷土料理を食べると、視聴者から『もっとお子様ランチを食べろ』とお叱りを受けるんです」(越山進プロデューサー)
県境ではバス会社が異なり、乗り継ぎができず、猛暑の中、15キロ歩くこともあった本気なロケなのだそう。
【2】「にっぽん縦断 こころ旅」(NHK BSプレミアム:平日7時45分~8時00分)
視聴者から寄せられた「思い出の地」を俳優・火野正平が自転車で目指す旅番組。観光名所や旅館や名物料理には目もくれない。時には63歳となった火野の「ハアハア、ゼイゼイ」という自転車を漕ぐ息遣いと、長閑な風景のみということもある。
「道中、勝手気ままに地元の人と触れ合う火野さんを観察し、火野さんの目線で旅を疑似体験してほしい。自由に想像を膨らませて見てほしいので、ナレーションもなければ派手なテロップや、BGMなど“親切過ぎる”演出は無しです」(北村卓三・チーフプロデューサー)
9月24日から秋の旅が和歌山からスタートする。予定調和な旅番組に飽きている人にはおススメだ。
【3】「玉袋筋太郎のナイトスナッカーズ」(日本BS放送:火曜24時30分~25時00分)
スナックを愛してやまない浅草キッドの玉袋が、東京近郊のスナックをカメラマンと2人でアポなしの直撃取材。二木啓孝・編成局長が制作意図を語る。
「玉袋氏が店構えや雰囲気でお店に飛び込み、打ち解けてからママと取材交渉する出会いがしらのライブ感が受けています。アッという間に溶け込んでいく玉袋氏の突撃精神は、社交の手本。ママの人生やお客がなぜ常連になったのか、必ず人生ドラマがあります」
「番組を観て、勇気を出して行ってみたら楽しかった」という若者が増えているそう。文化の継承に役割を果たしている番組だ。
※週刊ポスト2012年8月17・24日号