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賃借人がガス台を修繕 家賃と相殺が可能だが事前通知が必要

 竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「借りたマンションのガス台を勝手に修理してもよいですか」と以下のような質問が寄せられた。

【質問】
 不動産業者の紹介で借りた賃貸マンションに住んでいます。台所のガス台の調子がよくないので修理を頼んだのですが、家主はなかなか修理の手配をしてくれません。待っていられないので、こちらで勝手に別の業者に頼んでも問題ないでしょうか。ほかの細かい修理の場合もかまいませんか。

【回答】
 民法第606条1項で、「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」と、されています。台所のガス台が不調であれば不便なだけでなく、場合によっては事故の原因にもなります。

 賃貸借契約で家主は、賃貸借の目的となった建物を、賃借人にその本来の目的に従って使用収益させる義務を負っています。家主は、賃借人が正常に調理ができ、ガス事故が起きないように、ガス台を修繕する義務があるのは当然です。しかし、契約で家主の修繕義務を変更できます。ガス台の修繕をあなたの負担とする特約があれば、あなたが修繕せざるを得ません。

 特約がなく、修繕は原則どおり家主の負担という前提で考えると、論点は二つあります。勝手に修繕できるかということと、費用の負担です。修繕が家主の責任なのに、大家が修繕しないためにガス台が使えないのでは困ります。家主が修繕しないのなら、あなたが修繕するしかありません。

 民法第608条は、1項で「賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる」と定めており、賃借人が家主に代わって修繕等ができることを前提にしています。

 この場合に請求できる費用は、次の家賃から差し引けます。ただし、ただ差し引いたのでは単なる賃料未払いの債務不履行になりますから、賃貸借契約を解除されるおそれがあります。そこで事前に修繕費と賃料を相殺するという通知をしておくことが大切です。

 なお、従来の機能の回復以上に改良したときの増加費用は、修繕費として請求できないので注意してください。この分は明け渡しの時にまだ機能的価値が残っていれば、その範囲で有益費として請求できるだけです。

※週刊ポスト2012年9月7日号

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