国際情報

中国の抗議デモ 退学処分の脅しにもおそれず学生の参加目立つ

 中国では共産党幹部の不正・腐敗への不満が爆発し、権力側の弾圧をはねのけて過激な抗議行動が続発している。反日デモも多数行われている。中国の最新のデモ事情を評論家の宮崎正弘氏がレポートする。

 * * *
 中国では1日平均500件、年間に18万件の暴動が発生している。今年7月、江蘇省南通市にある日本の王子製紙工場をめぐって大規模抗議デモが発生した。

 参加者たちは同工場から啓東市の海につながる排水管建設計画の中止を要求する一方、地元の啓東市政府高官の腐敗に対しても果敢に抗議した。

 5000人を超える群衆が政府庁舎に集まり、1000人以上が敷地内になだれ込んだ。警察車両をひっくり返して破壊、一部は庁舎に乱入して、役人がよく賄賂として受け取る高級酒やワイン、たばこのほか、書類なども窓から放り投げた。

 背景にあるのは「反日感情」ではない。揚子江下流を漁場とする漁民(およそ4万人)が目的とした補償金に、若者の「公害」「汚染」という新感覚が加わったことが大きな要因だ。

 最近のデモ・抗議行動に若者が積極的に参加することも従来の「暴動」との違いである。  ある中国の専門家はこう分析する。

「学生の参加が目立ち、卒業資格停止や退学処分にするなど教師から脅されても、まったく懼(おそ)れずに抗議行動に加わる。中学生、高校生さえ参加する。若い世代は公害、汚染に敏感だ」

 7月の四川省徳陽市什ホウで起きた暴動はその典型だった。金属工場プラントの新設をめぐって「公害反対」を掲げた市民の抗議活動の様子が、ツイッター、ブログで広がると、学生が主体の過激な抗議行動へと変化していった。彼らもまた市庁舎を襲撃、破壊し、副市長を負傷させた。だが、武装警察は催涙弾を打つ程度で、血の弾圧には踏み切らなかった。

※SAPIO2012年9月19日号

関連キーワード

トピックス

世界的アスリートを狙った強盗事件が相次いでいる(時事通信フォト)
《イチロー氏も自宅侵入被害、弓子夫人が危機一髪》妻の真美子さんを強盗から守りたい…「自宅で撮った写真」に見える大谷翔平の“徹底的な”SNS危機管理と自宅警備体制
NEWSポストセブン
長崎県へ訪問された天皇ご一家(2025年9月12日、撮影/JMPA)
《長崎ご訪問》雅子さまと愛子さまの“母娘リンクコーデ” パイピングジャケットやペールブルーのセットアップに共通点もおふたりが見せた着こなしの“違い”
NEWSポストセブン
永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《坂口健太郎との熱愛過去》25歳の永野芽郁が男性の共演者を“お兄ちゃん”と呼んできたリアルな事情
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
国民に「リトル・マリウス」と呼ばれ親しまれてきたマリウス・ボルグ・ホイビー氏(NTB/共同通信イメージズ)
ノルウェー王室の人気者「リトル・マリウス」がレイプ4件を含む32件の罪で衝撃の起訴「壁に刺さったナイフ」「複数の女性の性的画像」
NEWSポストセブン
愛子さまが佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”とは(時事通信フォト)
《淡いピンクがイメージカラー》「オシャレになった」「洗練されていく」と評判の愛子さま、佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン
石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン