みうらじゅん氏は、1958年京都生まれ。イラストレーター、エッセイスト、ミュージシャン、ラジオDJなど幅広いジャンルで活躍。1997年「マイ ブーム」で流行語大賞受賞。仏教への造詣が深く、『見仏記』『マイ仏教』などの著書もある同氏が、死んだ後の蔵書のゆくえについて考える。
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遺族にとって、故人のコレクションの後始末は悩ましい作業になるようだ。例えば故人が愛読していた本。大抵の人は、それなりの数の蔵書を持っているだろう。
しかし、自分の死後、その蔵書がどうなるのか考えている人はあまりいないんじゃないかな。東京都古書籍商業協同組合(東京古書組合)によると、「遺族から蔵書を買い取ってほしいという問い合わせは非常に多い」らしく、日に数十件を超えることもあるそうだ。なるほど、故人の蔵書は古書店の重要な「仕入れ先」になっているというわけか。
最近は、古書店に依頼する前に、図書館に寄贈したいと連絡する人が多いとか。気持ちはわからないでもないけれど、まず引き取ってもらえることはない。
買い取ってもらう古書店はどう選んだらいいのだろう。実は、定年時に「これからは、本当に気にいった本だけ残したい」ということで、一度蔵書の整理をする人が意外に多いらしく、その段階で世話になった古書店を家族に伝えておくのがいいんじゃないだろうか。
そんな用意がなかった遺族は困ってしまうワケだが、そんな時は東京古書組合のような団体に電話をし、蔵書の傾向を話せば、そのジャンルを得意としている古書店を教えてくれるそうだ。
いったいどんな蔵書が高値で買い取ってもらえることになるのか? 前出の東京古書組合の方の答えは興味深いものだった。
「古いコミックや、マンガ雑誌は、まあまあいい値段がつけられますよ」
漫画家でもある私も非常に気になる話である。
※週刊ポスト2012年9月14日号