国内

若者の雇用 「金銭解雇」が可能な法律を作れば増えると識者

 若者の雇用機会が奪われ、ようやく職にありついても豊かになれないのは、オヤジが既得権を手放さないからだ。人事コンサルタントの城繁幸氏が労働環境を巡る若者世代とオヤジ世代の格差を論じる。

 * * *
 本来なら、労働組合が若者のために立ち上がらなければならないはずだ。ところが、日本の労組は実質的に経営陣に追従しており、若者の雇用を増やしたり、若者に多い非正規雇用の待遇を改善したりすることより、自分たちの既得権を守ることに汲々としている。労組までがオヤジ世代と若者世代の格差拡大装置になっているのだ。

 一般的に、世界の労働組合は職種別、業界別に結成される。それに対して日本では、各労組の連合体として業界ごとの組合、さらに最上部の連合体として連合があるが、実態は企業別組合の寄り合いに過ぎない。しかも、ほとんどの組合には正社員しか加入できない。そのため必然的に、経営側と利害を同じくする「第2人事部」「福利厚生部」と呼ぶに相応しい存在になってしまう。

 しかも、労組の多くは会社以上に年功序列が色濃く支配しており、勤続年数の長い組合員が幹部に選抜され、年配者が強い発言権を持つ傾向がある。さらに近年は非正規雇用が増えたことで若い組合員の加入が減り、若者の発言権はますます小さくなっている。

 私が以前、ある企業の労組で成果型の人事制度について講演した時、書記長が「断固反対」と発言したのに対し、ある若手社員が「我々は賛成だ」と反論した。しかし結局、多数決で組合としては反対することに決定した。労組では幹部たちの利害が優先され、若者の意見は通りにくいという実例である。

 では、オヤジ世代と若者世代の格差を解消するにはどうしたらいいか。

 最も根本的な解決法は「金銭解雇」が可能となる法律を作ることである。実は、ドイツもフランスも社員の解雇について日本同様に高いハードルを設けている。ただし、決定的に異なる点がある。それは、社員に一定の賃金を上乗せして支払えば、会社の都合で解雇できる「金銭解雇」が認められていることだ。

 日本でもこれが認められれば労働市場が流動化し、若者の雇用は一気に増える。それと同時に、明文化されたルールのもとで柔軟に賃下げできるよう法律を改正し、同一労働・同一賃金を導入することが望ましい。

 当然、オヤジ世代は強く反発するだろう。特に現役のオヤジ世代は自分たちも負け組になりつつあるという意識を持っているだけに、既得権を?奪されることへの恐怖感、抵抗感は強い。

 しかし、現在、もっとも高賃金の45~55歳の正社員が年間に得ている給与総額はおよそ45兆円にも上る(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」をもとに推計)。そのわずか1%、4500億円を削って若者に再分配するだけで、10万人程度の新たな雇用を生むことができる。 そうした人事改革によって企業は活力を取り戻し、生産性を向上させることができるし、若者の経済力が上がれば結婚率も出生率も上昇するなど社会全体に大きなプラスをもたらす。当然、オヤジ世代もそうしたメリットを享受できる。

 逆に言えば、そこまで大胆な改革を行なわない限り、日本企業も日本社会も永久に活力を取り戻せない。

※SAPIO2012年9月19日号

関連キーワード

トピックス

気持ちの変化が仕事への取り組み方にも影響していた小室圭さん
《小室圭さんの献身》出産した眞子さんのために「日本食を扱うネットスーパー」をフル活用「勤務先は福利厚生が充実」で万全フォロー
NEWSポストセブン
“極秘出産”していた眞子さんと佳子さま
《眞子さんがNYで極秘出産》佳子さまが「姉のセットアップ」「緑のブローチ」着用で示した“姉妹の絆” 出産した姉に思いを馳せて…
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
《日本中のヤクザが横浜に》稲川会・清田総裁の「会葬」に密着 六代目山口組・司忍組長、工藤會トップが参列 内堀会長が警察に伝えた「ひと言」
NEWSポストセブン
5月で就任から1年となる諸沢社長
《日報170件を毎日読んでコメントする》23歳ココイチFC社長が就任1年で起こした会社の変化「採用人数が3倍に」
NEWSポストセブン
石川県をご訪問された愛子さま(2025年、石川県金沢市。撮影/JMPA)
「女性皇族の夫と子の身分も皇族にすべき」読売新聞が異例の提言 7月の参院選に備え、一部の政治家と連携した“観測気球”との見方も
女性セブン
日本体操協会・新体操部門の強化本部長、村田由香里氏(時事通信フォト)
《新体操フェアリージャパン「ボイコット事件」》パワハラ問われた村田由香里・強化本部長の発言が「二転三転」した経過詳細 体操協会も調査についての説明の表現を変更
NEWSポストセブン
岐阜県を訪問された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年5月20日、撮影/JMPA)
《ご姉妹の“絆”》佳子さまがお召しになった「姉・眞子さんのセットアップ」、シックかつガーリーな装い
NEWSポストセブン
会話をしながら歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《極秘出産が判明》小室眞子さんが夫・圭さんと“イタリア製チャイルドシート付ベビーカー”で思い描く「家族3人の新しい暮らし」
NEWSポストセブン
ホームランを放ち、観客席の一角に笑みを見せた大谷翔平(写真/アフロ)
大谷翔平“母の顔にボカシ”騒動 第一子誕生で新たな局面…「真美子さんの教育方針を尊重して“口出し”はしない」絶妙な嫁姑関係
女性セブン
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《木漏れ日の親子スリーショット》小室眞子さん出産で圭さんが見せた“パパモード”と、“大容量マザーズバッグ”「夫婦で代わりばんこにベビーカーを押していた」
NEWSポストセブン
六代目体制は20年を迎え、七代目への関心も高まる。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
《司忍組長の「山口組200年構想」》竹内新若頭による「急速な組織の若返り」と神戸山口組では「自宅差し押さえ」の“踏み絵”【終結宣言の余波】
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
「よだれを垂らして普通の状態ではなかった」レーサム創業者“薬物漬け性パーティー”が露呈した「緊迫の瞬間」〈田中剛容疑者、奥本美穂容疑者、小西木菜容疑者が逮捕〉
NEWSポストセブン