国際情報

尖閣諸島巡る米国の冷淡な対応 トップ同士の信頼関係ないため

 領土問題によって日中、日韓関係が揺らいでいる。中韓の「増長」は日米関係の劣化が原因とジャーナリストの須田慎一郎氏は分析する。以下、氏の報告である。

 * * *
 尖閣諸島問題にしろ、竹島問題にしろ、大マスコミは日中、日韓関係の悪化ばかりを取り上げる。だが、本当に危惧すべき問題はそこではない、と外務省幹部は言う。「一連の外交で日本が守勢に回っている理由ははっきりしている。一にも二にも日米関係がかつてないほど冷え込んでいるからに他ならない」

 8月15日、香港の活動家が尖閣諸島に上陸した一件は、様々な形で野田政権を揺るがすことになったが、野田官邸にとって最もショックだったのは、頼みの綱とも言える米国が、終止冷淡な対応をとったことだった。

 米国務省のヌランド報道官は、尖閣諸島の領有権に関する米国政府の立場について、「特定の立場をとらない」と強調してみせた。「ここは最低でも、『懸念している』という発言が欲しかった。あれでは、中国側に誤ったメッセージを送ることにもなりかねない」(外務省幹部)

 そもそもオバマ政権は、尖閣諸島は日米安保の適用対象だと明言してきたはずだ。にもかかわらず、なぜそのような発言が出てきたのか。

「近年の日本の首相が、ホワイトハウスとの間にきちんとした信頼関係を築けていないことが最大の要因だ。我々もホワイトハウスや国務省の担当者から、たびたび『なぜこうも毎年毎年、首相が変わるのか。これではまともな外交なんてできない』といった発言を聞かされる」(前出同)

 しかも民主党政権は、米国の神経を逆撫でするようなことばかりやってきた。鳩山元首相の在沖米軍基地の「県外移転」構想や、今は民主党を去った小沢一郎氏が引き連れた大訪中団に象徴される親中外交などだ。

「アメリカの極東エリアの基本戦略は、『日中接近は許さない』ということに尽きる。これは、民主党も共和党も一緒だ。そうなると今の日中関係はアメリカにとってウェルカムな状況なのだ」(米国務省担当者)

 日米関係は確実に劣化している。

※SAPIO2012年9月19日号

関連キーワード

トピックス

長男・泰介君の誕生日祝い
妻と子供3人を失った警察官・大間圭介さん「『純烈』さんに憧れて…」始めたギター弾き語り「後悔のないように生きたい」考え始めた家族の三回忌【能登半島地震から2年】
NEWSポストセブン
古谷敏氏(左)と藤岡弘、氏による二大ヒーロー夢の初対談
【二大ヒーロー夢の初対談】60周年ウルトラマン&55周年仮面ライダー、古谷敏と藤岡弘、が明かす秘話 「それぞれの生みの親が僕たちへ語りかけてくれた言葉が、ここまで導いてくれた」
週刊ポスト
小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン