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即席麺「店の味に近づけようとすると客離れする」と愛好者

 ロングセラー「サッポロ一番」を持つサンヨー食品は、9月10日に新商品「サッポロ一番 麺の力」を投入した。これには5年前から着手された製麺開発技術がつぎ込まれているというが、同社は画期的な製麺技術を前面に押し出すのではなく、あえて一歩引いた姿勢に商機を見出そうとしている。スープによって麺の食感を変えるなど、麺とスープとのバランスも含めた商品全体で勝負したいというのだ。

 単に新製法を開発するだけではベストセラーは生まれない。そこに時代のトレンドをどう組み込むかが浮沈を決めるのだ。

 定番商品「チャルメラ」を販売する明星食品も商品に時代の空気をどう反映させるかに苦心したという。

 今から2年前の2010年、同社は「チャルメラ」誕生45年を迎えるにあたって、中長期的に「刷新」に取り組んだ。担当者はいう。

「チャルメラはファンの方の年齢層がだんだん高くなってきていたので、新しい層にも訴求したいと話し合ったんです」

 まずは“チャルメラおじさん”のキャラクターデザインをリニューアル。さらにメニューごとに「秘密の小袋」という粉末スープをつけて、スープの味に合わせて麺の太さを変えた。だが、ノンフライ麺などの新製法を導入する他社とは異なり、伝統のフライ麺製法には、手を加えなかった。

「細かなブランドスイッチはしましたが、あくまでうちは、即席麺らしさにこだわっていきたい。その代わり、とんこつ味やちゃんぽん味などの味のバリエーションを増やしました。特にちゃんぽんは醤油の次に売り上げているなど大ヒットになった。野菜がたくさんとれるし、外食産業でも一般化していましたからね」

 こうしたキャンペーンの方針には不安もあったというが一昨年、昨年と前年比二桁増を果たしたことで関係者は胸をなで下ろした。インスタントラーメン愛好家の大山即席斎氏が開発現場の難しさを語った。

「単に進化させればいいというわけではない。即席麺は店で出されるラーメンとは違います。例えばカップ麺ではラーメンに近づけるためのアプローチをした商品はたくさん出ているが一番売れているのがカップヌードルという現実がある。つまり店のラーメンに近づけようとすると客離れを起こす商品だといえます。その選択は非常に難しい」

※週刊ポスト2012年9月28日号

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