国内

認可保育園入るため偽装離婚の例も 深刻化する待機児童問題

 保育園には、国が定めた設置条件(広い庭、充実した調理設備など)を満たし、公の費用によって補助される「認可保育園」と、そうではない「認可外保育園」の2種類がある。

 希望者はもちろん認可保育園に殺到。希望を出しているにもかかわらず、その保育園が満員などの理由で入れずにいる待機児童の数は、2011年4月現在、全国で2万5556人(厚生労働省調べ)にものぼっている。

 しかしながら、この数字には、「どうせ認可保育園には入れないから」と、申請自体をあきらめてしまった家庭などが含まれておらず、潜在的な待機児童の数は、0~2才児を中心に、ゆうに80万人を超えるといわれており、大きな社会問題になっている。

 入園の明暗を分けるのは、各自治体が独自で決めている「選考基準指数」と呼ばれる“点数”だ。これは保育園への入園が、その家庭にとってどれだけ必要かを判断するためのもので、“点数”の高い人たちから入園が認められる。

 例えば、東京都でいちばん待機児童の多い、世田谷区の場合、フルタイムの共働きで100点。夫がフルタイムで妻がパートタイムだと65~95点。これが専業主婦になると50点になる。一般的に親が働く時間が長いほど、点数が加算されていく。

 そのほか、生活保護世帯はプラス10点、ひとり親でプラス20点など加点もあれば、同居の祖父母(60才未満)が無職の場合は、子供の面倒をみることができるだろうとみなされ、マイナス6点などと減点される。

 それゆえ、1点でも多く点数を稼ごうと、ママたちは驚くような裏技まで駆使しているのが現状だ。

 東京都国立市在住の石川佑子さん(仮名・39才)は、長男(4才)、次男(2才)、長女(11か月)の3人の母親だ。長男の妊娠を機に退職し、専業主婦になったが、その後リーマンショックの影響で、メーカー勤務の夫の収入が激減した。2009年4月、何か仕事を始めるために長男を保育園に預けようと思ったところ、待機児童になった。

「まずは同居していた親に子供を預け、就職先を決めました。そして長男を認可外保育園に入れたんです。高い保育料だったんですが、これも認可保育園に入れるか入れないかを左右する点数にかかわっていたので仕方なく…。

 父にはシルバー人材センターに登録してもらい、母はボランティア活動団体の役員になってもらいました。同居していても育児の手伝いをする時間がないことを証明する書類を作って、市役所に提出するためです。そうやって2010年4月に、ようやく認可保育園に入れることに成功したんです」

 東京都中野区在住の吉田慶子さん(仮名・31才)は、IT関連企業に勤務する夫と、小学1年生になる長男、1才5か月になる長女の4人暮らし。不況のため、前年の夫の収入が100万円減。もう貯金を切り崩せないと、慶子さんが働きに出ることを決めたのだが…。

「中野区はなかなか保育園に入れないという話でしたが、友達は子供を預けることができました。“シングルマザーだからうまくいったのよ”と言ったのを聞いて、私もそうするしかないと決断して…」

 慶子さんが選んだのは、いわば偽装離婚という手段。夫を説得してペーパー離婚。しかし、結局それでも入園は叶わなかった。

 待機児童をもつママたちにとっては、それほど事態は深刻で、急を要する事態となっているのだ。

※女性セブン2012年10月11日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

近年ゲッソリと痩せていた様子がパパラッチされていたジャスティン・ビーバー(Guerin Charles/ABACA/共同通信イメージズ)
《その服どこで買ったの?》衝撃チェンジ姿のジャスティン・ビーバー(31)が“眼球バキバキTシャツ”披露でファン困惑 裁判決着の前後で「ヒゲを剃る」発言も
NEWSポストセブン
2025年10月末、秋田県内のJR線路で寝ていた子グマ。この後、轢かれてペシャンコになってしまった(住民撮影)
《線路で子グマがスヤスヤ…数時間後にペシャンコに》県民が語る熊対策で自衛隊派遣の秋田の“実情”「『命がけでとったクリ』を売る女性も」
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
文化勲章受章者を招く茶会が皇居宮殿で開催 天皇皇后両陛下は王貞治氏と野球の話題で交流、愛子さまと佳子さまは野沢雅子氏に興味津々 
女性セブン
各地でクマの被害が相次いでいる(右は2023年に秋田県でクマに襲われた男性)
「夫は体の原型がわからなくなるまで食い荒らされていた」空腹のヒグマが喰った夫、赤ん坊、雇い人…「異常に膨らんだ熊の胃から発見された内容物」
NEWSポストセブン
雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA
【天皇陛下とトランプ大統領の会見の裏で…】一部の記者が大統領専用車『ビースト』と自撮り、アメリカ側激怒であわや外交問題 宮内庁と外務省の連携ミスを指摘する声も 
女性セブン
相次ぐクマ被害のために、映画ロケが中止に…(左/時事通信フォト、右/インスタグラムより)
《BE:FIRST脱退の三山凌輝》出演予定のクマ被害テーマ「ネトフリ」作品、“現状”を鑑みて撮影延期か…復帰作が大ピンチに
NEWSポストセブン
名古屋事件
【名古屋主婦殺害】長らく“未解決”として扱われてきた事件の大きな転機となった「丸刈り刑事」の登場 針を通すような緻密な捜査でたどり着いた「ソフトテニス部の名簿」 
女性セブン
今年の6月に不倫が報じられた錦織圭(AFP時事)
《世界ランキング急落》プロテニス・錦織圭、“下部大会”からの再出発する背景に不倫騒と選手生命の危機
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(左/時事通信フォト)
《空腹でもないのに、ただただ人を襲い続けた》“モンスターベア”は捕獲して山へ帰してもまた戻ってくる…止めどない「熊害」の恐怖「顔面の半分を潰され、片目がボロり」
NEWSポストセブン
カニエの元妻で実業家のキム・カーダシアン(EPA=時事)
《金ピカパンツで空港に到着》カニエ・ウエストの妻が「ファッションを超える」アパレルブランド設立、現地報道は「元妻の“攻めすぎ下着”に勝負を挑む可能性」を示唆
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さんの胸キュンワンシーンが話題に(共同通信社)
《真美子さんがウインク》大谷翔平が参加した優勝パレード、舞台裏でカメラマンが目撃していた「仲良し夫婦」のキュンキュンやりとり
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の発生時、現場周辺は騒然とした(共同通信)
「子どもの頃は1人だった…」「嫌いなのは母」クロスボウ家族殺害の野津英滉被告(28)が心理検査で見せた“家族への執着”、被害者の弟に漏らした「悪かった」の言葉
NEWSポストセブン