国際情報

韓国人記者 3・11後に寿司屋の大将の覚悟聞き、日本人を理解

 緊張続く日韓関係の中で、日本担当の韓国人記者は何を考え、伝えているのか。長く日本報道に携わるベテランの韓国人記者に、現在の日本を取材して感じることを聞いた。(取材・構成=フリーライター神田憲行)

 * * *
 私が初めて日本語を勉強したとき、韓国人の女の先生は最初の授業でちょっと皮肉混じりの笑顔を浮かべてこういいました。

「みなさんが日本語に興味があって選択したわけではないことを私は知っています。でも最初の1時間だけ、真面目な話をさせてください」

「みなさんは知らないと思いますが、韓国と日本は複雑で難しい関係があります。言葉を学ぶということは単語を暗記するだけでなく、その国の立場、主張を学ぶことでもあります。みなさんが日本語を学んで、日本の立場を理解するようになって、韓国と日本の複雑で難しい問題を解決するような人になって欲しいと、私は願っています」

 私、それを聞いてとても興奮したんですね。韓国と日本の難しい問題なんて知らなかったから、「よし、だったら自分の力で解決してやるぞ」って。日本人は「韓国人はみんな反日教育を受けている」と思い込んでいますが、私は反日教育なんて受けたことがありません。私が受けたのはこういう教育です。

「3.11」は日本と日本人について気づかされることが多かった。地震直後に被災地取材のためにすぐ現地に入ったのですが、乗ったタクシーの運転手さんが被災地の惨状に泣きながら運転していました。途中で自衛隊に通行止めをされたんですが、運転手さんが、

「この人は韓国の新聞記者なんだ。取材して韓国の人にも知らせないといけないんだ」

 と、一生懸命説明して、通してもらえました。

 原発事故では都内の馴染みのお寿司屋さんにいて、大将に「大阪まで逃げませんか。人を紹介しますよ」と言ったら、微笑みながら、

「私が逃げたら常連さんたちがみんな不安になるでしょう。私ができることはこういう状態の中でも店を開けることなんです。なにかあればここで死ぬのが私の役目です」

 そのとき初めて、私は「日本人の哀しみ」のようなものがわかったんです。今まで私からすれば日本は「ラッキーなお坊ちゃんの国」。侵略の恐れも何もない。でも日本人はいくら自然災害があろとうともその地に住むしかない。日本の不運を見て喜んでいるのとは全然違います。日本人の哀しみ、悩む日本人の姿を見て、初めて素顔に触れた気がするんです。私自身は親日でも反日でもありません。むしろ親日と反日の気持ちが1日のなかでコロコロ変わる(笑)でも「3.11」の取材を通してこの国への興味はもっと強くなりました。これからも「ジャパン・ウオッチャー」として仕事をしていきたいと思います。


関連キーワード

トピックス

愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
嵐について「必ず5人で集まって話をします」と語った大野智
【独占激白】嵐・大野智、活動休止後初めて取材に応じた!「今年に入ってから何度も会ってますよ。招集をかけるのは翔くんかな」
女性セブン
岡田監督
【記事から消えた「お~ん」】阪神・岡田監督が囲み取材再開も、記者の“録音自粛”で「そらそうよ」や関西弁など各紙共通の表現が消滅
NEWSポストセブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
イメージカット
「有名人なりすまし広告」の類に“騙されやすい度”をチェックしてみよう
NEWSポストセブン
不倫騒動や事務所からの独立で世間の話題となった広末涼子(時事通信フォト)
《「子供たちのために…」に批判の声》広末涼子、復帰するも立ちはだかる「壁」 ”完全復活”のために今からでも遅くない「記者会見」を開く必要性
NEWSポストセブン
前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン