夫婦の日常も様々だが、あらゆる夫婦のエピソードが、漫談家の綾小路きみまろにメールや手紙で続々と寄せられている。今回寄せられたのは、繊維メーカー勤務のご主人(41歳)。猛暑の夏の疲れが残るご主人を心配する奥様(38歳)です。
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「これから帰るよ」と電話すると、「今夜はアナタの大好きな蒲焼きよ」と弾んだ妻の声です。玄関のドアを開けると、プ~ンと芳しいにおいが!「ウナギ、高かっただろ?」「大丈夫。ウナギじゃなくて、穴子に20円の蒲焼きのタレをかけた穴子蒲焼きだから」これが結構美味しいんです。食欲も出て、ご飯をおかわりしました。
次の夜は焼いたサンマに蒲焼きのタレです。これもいける! 子供たちも喜んで、「ママ、明日も食べた~い!」妻が「アナタは?」と聞くので、「もちろん!」と答えたんですが、「わかったわ」というその目くばせが意味深で、何だか気になったんですよねえ。
3日目は再び穴子の蒲焼きです。子供たちが寝ると、「土用の丑の日にウナギっていったの、平賀源内よね」と妻。「そうだよ。ウナギを食べると元気になるという宣伝文句を作ってさ」「3日も食べたんだもん。アナタも元気モリモリでしょ? だから、今夜は子供たちを早く寝かせたのよ」とウインクです。
「そ、それはウナギだろ? 僕が食べたのは穴子とサンマ」「タレじゃダメなの?」って、20円のタレで元気になるわけないだろ!
※週刊ポスト2012年11月9日号