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人生の最期 「自宅で迎えたい」人が5割だが8割が病院で死亡

【書籍紹介】『病院で死ぬのはもったいない〈いのち〉を受けとめる新しい町へ』(山崎章郎、二ノ坂保喜・著/米沢慧・編/春秋社/1890円)
【評者】香山リカ(精神科医)

 あなたは人生の最期をどこで迎えたいですか。この質問に「自宅で」と答える人が5割を超えているものの、実際には8割の人が病院で亡くなっている。「在宅での臨終なんて、しょせん無理」とあきらめている人もいるはずだ。

 ところが最近、「家で最期を」という人の希望をかなえるために奔走する医療関係者が増え、住み慣れた自宅で家族に看取られてその時を迎える人も次第に増えつつある。本書は、「在宅ホスピス」という新しい地域医療の先駆者であるふたりの医師がこれまでの道のり、日ごろの活動、そして未来に望むことまでを心ゆくまで語り合った充実の一冊だ。

 外科医からホスピス勤務医になり、そしていま病院から外に出て地域でのケアや家での看取りに力を入れている山崎医師は、「いのちが大事なのはまさにその人が人間らしく大事にされているという思い」を本人も家族も持ててこそ、として、病院での過剰な医療や機械的な延命治療に疑問を投げかける。

 20年以上にわたり福岡で在宅医療に取り組んで来た二ノ坂医師は、医師は、「人が本来もっている『ケアの力』をかえって奪っている」こともある、と指摘する。そして対談の司会者は、ふたりの主張から「医療という枠組みからどう患者を解放していくか」と着地点を見出す。先進医療などが大流行りだが、多くの人は「もっと医療を!」ではなくて「もっと医療からの解放を!」と叫ぶべきだ。

「でも家族の負担が」と心配する人には、山崎医師はこう呼びかける。「過剰な医療が施されなければ、人の死は穏やかであり、死は自然な出来事」「(在宅で看取ると)本人の思いにきちんと応えられたと胸張って生きていくことに繋がっていく」。

 だからこそ、家族にとっても「人生における最大のイベント」である看取りを病院に委ねるのは、「もったいなさすぎる」という山崎氏の言葉が、本書のタイトルにもなっている。家族の、そして自分の人生の最期について、前向きに考えたくなる希望の書と言えよう。

※週刊ポスト2012年11月16日号

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