アフリカ大陸最高峰への登頂経験もある68才の女性と、6000m級の山に登った経験もある62才の女性、そして日本百名山の制覇を目指していた76才の男性──亡くなったのは錚々たる登山歴をもつベテランの男女3人。万里の長城の登山ツアー中に遭難死した事故は、大雪と強風に襲われ、軽装のまま身動きが取れなくなった末の悲劇だった。
ツアーは観光コースを外れた未整備の山岳地帯を、9日間で100km歩くというハードな内容。にもかかわらず、旅行会社は現地任せで、下見もしていなかった。
女性で初めてエベレストと世界7大陸最高峰に登頂した登山家の田部井淳子さん(73才)は、今回の事故について「考えられない。起きてはいけない事故が起きた」と語り、次のように指摘する。
「ガイドの判断に問題があったということに尽きますね。天候が悪くなるという予報があったわけですし、充分な雪対策をしておくべきでした。それと皆さん、中高年でしたから、そうした年齢を踏まえた行程になっていたのかも気になります」
国内では、空前の登山ブームを反映して中高年の登山中の事故が相次いでいる。「自分はベテランだから大丈夫」という過信も関係しているのかもしれない。前出の田部井さんはこう注意を促す。
「私自身、60才を過ぎてからは慎重になっています。体力が衰える分、計画にも余裕をもたせ、1時間半とあれば3時間かかると考えたり、1日で行けるとあっても2日行程で行くようにしたりしていますし、天気も入念に調べます」
※女性セブン2012年11月29日・12月6日号