スポーツ

解雇の元日ハム・木田優夫に「現役続けて欲しい」と栗山監督

 過去の栄光やプライドをかなぐり捨てても、現役にこだわる男たちがいる。一度は栄光を掴んだはずの彼らは、なぜ身体を痛めつけ、泥にまみれながらも野球を続けるのか。ノンフィクションライターの柳川悠二氏が、元日ハム・木田優夫のケースを紹介する。

 * * *
 11月9日に行われた第1回トライアウトを受けたベテランたちの中に、獲得の目安期限である1週間を過ぎた今も、ひたすら連絡を待ち続ける者がいる。

 今季、北海道日本ハムファイターズに所属していた木田優夫(44)だ。目下に時計台を、遠くに札幌ドームを眺めるホテルの一室にやってきた木田は、物静かに状況を説明し始めた。

「ファイターズを戦力外となってから1週間もなかったので、トライアウトの時点では心の整理がついていなかったんです。今は野球を続けたい気持ちがどんどんどんどん強くなってきているんですけど……まだ連絡はありません」

 北海道で小学生時代を過ごした木田にとって、この地を本拠地とする日ハムは野球人としての最終章を飾るにどこよりも相応しい球団だった。

 1998年に初めてアメリカに挑戦する際に相談にのってもらい、以降、尊敬する先輩として付き合ってきた栗山英樹が監督に就任した今季は、例年以上に期する気持ちを膨らませていた。ところがわずか1試合の1軍登板に終わり、多くの時間を2軍施設のある千葉県の鎌ヶ谷で過ごした。

 木田はこれまで、一度も「引退」を考えたことがない。引き際を自分で設定できないからこそ、信頼を寄せる人間から「十分やったのではないか」「もう無理だ」と声をかけられた時が、潮時とも決めていた。

「同年代の金本知憲や小久保裕紀が引退しましたけど、日本球界で偉大な成績を残した彼らは自ら『引退』を口にできる立場の人間。僕はそうじゃない」

 日ハムが日本シリーズを終えたすぐ後、木田は栗山に呼ばれた。いよいよ引退を勧告されるかもしれない。 そう覚悟した。いや、そういう言葉を、誰より木田が待っていたのかもしれない。だが、栗山の言葉は意外なものだった。

「ファイターズの監督としては、一緒にはできない。だけど、個人的な関係に戻った立場でいえば、現役を続けて欲しい」

 もうひとり、日ハムには木田の恩人がいる。チーム統括本部長を務める吉村浩だ。彼は木田がデトロイト・タイガースに所属した時、同球団のフロントにいた人物。日ハムにも誘ってくれた吉村に電話を入れ、木田は揺れる胸中を明かした。

「これまで戦力外通告を受けた時と今年は状況が違う。でも、お世話になった吉村さんに今後のことを相談しているうちに、再び現役を続けるという気持ちが盛り上がってきちゃったんです。トライアウト受験は吉村さんに勧められました。受験する行為が、現役続行の意思表示になる、と」

※週刊ポスト2012年12月7日号

関連記事

トピックス

自身のYouTubeで新居のルームツアー動画を公開した板野友美(YouTubeより)
《超高級バッグ90個ズラリ!》板野友美「家賃110万円マンション」「エルメス、シャネル」超絶な財力の源泉となった“経営するブランドのパワー” 専門家は「20~30代の支持」と指摘
NEWSポストセブン
濱田よしえ被告の凶行が明らかに(右は本人が2008年ごろ開設したHPより、現在削除済み、画像は一部編集部で加工しております)
「未成年の愛人を正常に戻すため、神のシステムを破壊する」占い師・濱田淑恵被告(63)が信者3人とともに入水自殺を決行した経緯【共謀した女性信者の公判で判明】
NEWSポストセブン
指定暴力団山口組総本部(時事通信フォト)
《外道の行い》六代目山口組が「特殊詐欺や闇バイト関与禁止」の厳守事項を通知した裏事情 ルールよりシノギを優先する現実“若いヤクザは仁義より金、任侠道は通じない”
NEWSポストセブン
志村けんさんが語っていた旅館への想い
《5年間空き家だった志村けんさんの豪邸が更地に》大手不動産会社に売却された土地の今後…実兄は「遺品は愛用していた帽子を持って帰っただけ」
NEWSポストセブン
暑くなる前に行くバイクでツーリングは爽快なのだが(写真提供/イメージマート)
《猛暑の影響》旧車會が「ナイツー」するように 住民から出る不満「夜、寝てるとブンブン聞こえてくる」「エンジンかけっぱなしで眠れない」
NEWSポストセブン
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《木漏れ日のなかベビーカーを押す海外生活》眞子さん、苦渋の決断の背景に“寂しい思いをしている”小室圭さん母・佳代さんの親心
NEWSポストセブン
自殺教唆の疑いで逮捕された濱田淑恵被告(62)
《信者の前で性交を見せつけ…》“自称・創造主”占い師の濱田淑恵被告(63)が男性信者2人に入水自殺を教唆、共謀した信者の裁判で明かされた「異様すぎる事件の経緯」
NEWSポストセブン
米インフルエンサー兼ラッパーのリル・テイ(Xより)
金髪ベビーフェイスの米インフルエンサー(18)が“一糸まとわぬ姿”公開で3時間で約1億5000万円の収益〈9時から5時まで働く女性は敗北者〉〈リルは金持ち、お前は泣き虫〉
NEWSポストセブン
「第42回全国高校生の手話によるスピーチコンテスト」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
《ヘビロテする赤ワンピ》佳子さまファッションに「国産メーカーの売り上げに貢献しています」専門家が指摘
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《総スカン》違法薬物疑惑で新浪剛史サントリー元会長が辞任 これまでの言動に容赦ない声「45歳定年制とか、労働者を苦しめる発言ばかり」「生活のあらゆるとこにでしゃばりまくっていた」
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《エプスタイン事件の“悪魔の館”内部写真が公開》「官能的な芸術品が壁にびっしり」「一室が歯科医院に改造されていた」10代少女らが被害に遭った異様な被害現場
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、インスタに投稿されたプライベート感の強い海水浴写真に注目集まる “いいね”は52万件以上 日赤での勤務をおろそかにすることなく公務に邁進
女性セブン