国内

笹子トンネル事故「他のタイプでも大丈夫ではない」と専門家

 9人の死者を出した笹子トンネルの衝撃的な崩落事故。その発生から3日後の12月5日未明、富山県小矢部市内の国道8号倶利伽羅トンネルで、天井に設置された照明器具の一部が落下し、軽自動車を直撃する事故が発生した。

 落下したのは照明器具のステンレス製の外枠で、縦37cm、横70cm、重さは約1kg。照明器具本体にネジで取り付けられていた。

 国土交通省富山河川国道事務所の説明によると昨年12月の点検時には異常はなかったというが、直撃を受けた軽自動車のフロントガラスはクモの巣状にひび割れており、運転手が急ブレーキを踏んで玉突き事故にでもなれば、あわや大惨事にもなりかねない事故だった。

 東洋大学経済学部教授で、インフラ老朽化問題の第一人者の根本祐二氏は語る。

「笹子トンネル事故の根本的な問題はインフラの老朽化にあります。笹子ではたまたまトンネルの天井板と金属部分の弱さというところに症状が現われただけで、“他のタイプのトンネルなら大丈夫”ということにはならないのです。こうした事故が起こる危険性は、日本各地のトンネルに潜んでいるのです」

 国土交通省は今回の事故を受け、「天井板つり下げ」型のトンネルの緊急点検を実施。その数は12月6日現在、国と高速道路会社管理分49本、地方自治体などが管理するもの12本にも及ぶ。

「中には笹子トンネルより古いものも多くあります。1971年開通した夜昼トンネルでは、笹子での事故後の検査で計60か所の不具合が見つかりました」(社会部記者)

 また、つり天井以外にもトンネル内のコンクリート崩落や、富山の事故のように照明器具の一部が落下する事故もある。果たして他のタイプのトンネルならば安全であるといえるのか。

「山が険しくトンネルが長くなりやすかったり、降水量が多かったりと、日本には日本独自の地形や気候条件があります。また、多くの道路やトンネルが、1960年代、1970年代の安全基準によって施工されています。交通量の増加やそれに伴う排気ガス量の影響など、その後の状況を完全に予想できていたわけではありません」(前出・根本氏)

 都市基盤安全工学が専門の東京大学名誉教授・魚本健人氏もこう語る。

「トンネルのある山を流れる地下水に、強い酸性の温泉成分などが含まれていた場合、コンクリートが温泉成分のはたらきにより劣化する可能性も考えられます」

 地震大国で、かつ温泉大国でもあるという特殊事情を抱える日本。トンネルの種類によらず、諸外国以上に経年劣化による危険性が高いといえる。

※週刊ポスト2012年12月21・28日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
4月3日にデビュー40周年を迎えた荻野目洋子
【デビュー40周年】荻野目洋子 『ダンシング・ヒーロー』再ヒットのきっかけ“バブリーダンス”への感謝「幅広い世代の方と繋がることができた」
週刊ポスト
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト
映画『アンダンテ~稲の旋律~』の完成披露試写会に出席した秋本(写真は2009年。Aflo)
秋本奈緒美、15才年下夫と別居も「すごく仲よくやっています」 夫は「もうわざわざ一緒に住むことはないかも」
女性セブン
小野寺さんが1日目に行った施術は―
【スキンブースター】皮下に注射で製剤を注入する施術。顔全体と首に「ジュベルック」、ほうれい線に「リジュラン」、額・目尻・頰に「ボトックス」を注入。【高周波・レーザー治療】「レガートⅡ」「フラクショナルレーザー」というマシンによる治療でたるみやしわを改善
韓国2泊3日「プチ整形&エステ旅行」【完結編】 挑戦した54才女性は「少なくとも10才は若返ったと思います!」
女性セブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン
日本人パートナーがフランスの有名雑誌『Le Point』で悲痛な告白(写真/アフロ)
【300億円の財産はどうなるのか】アラン・ドロンのお家騒動「子供たちが日本人パートナーを告発」「子供たちは“仲間割れ”」のカオス状態 仏国民は高い関心
女性セブン
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
NEWSポストセブン