国内

話題となった2.5世帯住宅 マイナスイメージ払拭が鍵だった

 へーベルハウスの『2.5世帯住宅』に注目が集まっている。2世帯+単身者が「集まって暮らす」新発想の住宅だ。社内では評価が高かったというものの、最後の壁があったという。2.5世帯住宅はいかにして生まれ、へーベルハウスはその壁をどう克服したのか。作家で五感生活研究所の山下柚実氏が報告する。 

 * * *
 女性が当たり前のように外で働く時代。一方では晩婚化、婚活が話題になっている。「いつ結婚するの?」と周囲から干渉されるのがイヤで一人暮らしをしてきた人も多い。しかし、未曾有の震災を体験して私たちの価値観は大きく転換した。人と人との「絆」の意味が浮き彫りになった。

 そんな中、2012年8月に発売された新しい住宅に、熱い視線が注がれている。消費者から問い合わせが相次ぎ、担当者は対応にかけずり回っているという。いったいどんな家だろう?

 名前は『2.5世帯住宅』。親世帯と子世帯が一緒に暮らす従来の2世帯住宅に、新たに「0.5」世帯が加わるという。その「0.5」とは、独身の姉や妹、兄や弟。それが『へーベルハウス2.5世帯住宅』の提案だ。

 さぞや大震災がハウスメーカーの企画に影響を与えたに違いない。「絆」が求められる時代の反映か……などと勝手に想像していた私。あにはからんや、開発担当者はこんな一言を口にした。

「特に震災の影響ということはありません。それ以前から、集まって暮らす新しい形態が生まれてきていたのです」「私どもがこれまで販売してきたヘーベルハウス2世帯住宅について、家族構成の実態を調べてみたのです。

 すると、その17%がすでに2.5世帯で住んでいた。これは想像以上の数字でしたね」と、旭化成ホームズ・二世帯住宅研究所の松本吉彦所長(53)は驚きを隠さない。

「詳細に見ていくといくつもの発見がありました。まず、2世帯同居に比べて2.5世帯は、特に分離度の高い間取りでは暮らしの満足度が高いことがわかったのです」

 同居する独身のお姉さんが、他の人にとって「役立つ存在」であることも浮かび上がってきた。ワーキングシングルの姉や妹といえば、最先端のファッションやおいしい店、海外旅行など多彩な知識と体験を持っている。

「彼女たちは家事や子育てのサポート役のみならず、家の中で最先端の情報メッセンジャーとして貢献しています。一方で、祖父や祖母は、昔のよき日本の暮らしを教えてくれる。そんな家に育つ子は敬語の使い方が上手だったり、相手によって話し方を変えることができる。つまり社会性を身に付けやすいのです」

 一つ屋根の下に多様な人が暮らす。すると家が地域コミュニティのように機能し始める。それが子どもにも大人にもよい影響を及ぼしていた、というわけだ。

「2.5世帯住宅」の内容は社内会議でも高く評価された。しかし、最後に一つの懸念が残っていた。「社会にあるネガティブな捉え方にいかに対処するか」という課題だった。

「0.5世帯については一般的に、『結婚できない人』『離婚した出戻り』というマイナスイメージがある。そうした人と同居するという提案を、いかに『肯定的に』伝えられるのか」

 最後に越えねばならないハードルは高かった。でも、と松本所長は続ける。「現場で楽しそうに暮らす2.5世帯をたくさん見ました。ネガティブなイメージに勝る楽しい生活という現実をどう表現するか、PR担当者を交えて検討を重ねました」

 集まって暮らすことのストレスを減らすという「問題対処」にとどまらず、もう一歩踏み込んで、集まる「楽しさ」を発信する新商品。「2.5世帯住宅」は、いわば「問題対処」から「積極的な提案」への転換だった。その発信力が世の共感を集め、反響を呼んだのだ。

※SAPIO2013年1月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

決死の議会解散となった田久保眞紀・伊東市長(共同通信)
「市長派が7人受からないとチェックメイト」決死の議会解散で伊東市長・田久保氏が狙う“生き残りルート” 一部の支援者は”田久保離れ”「『参政党に相談しよう』と言い出す人も」
NEWSポストセブン
石橋貴明の現在(2025年8月)
《ホッソリ姿の現在》石橋貴明(63)が前向きにがん闘病…『細かすぎて』放送見送りのウラで周囲が感じた“復帰意欲”
NEWSポストセブン
ヘアメイク女性と同棲が報じられた坂口健太郎と、親密な関係性だったという永野芽郁
「ずっと覚えているんだろうなって…」坂口健太郎と熱愛発覚の永野芽郁、かつて匂わせていた“ゼロ距離”ムーブ
NEWSポストセブン
新潟県小千谷市を訪問された愛子さま(2025年9月8日、撮影/JMPA) 
《初めての新潟でスマイル》愛子さま、新潟県中越地震の被災地を訪問 癒やしの笑顔で住民と交流、熱心に防災を学ぶお姿も 
女性セブン
羽生結弦の被災地アイスショーでパワハラ騒動が起きていた(写真/アフロ)
【スクープ】羽生結弦の被災地アイスショーでパワハラ告発騒動 “恩人”による公演スタッフへの“強い当たり”が問題に 主催する日テレが調査を実施 
女性セブン
自民党総裁選有力候補の小泉進次郎氏(時事通信フォト)
《自民党総裁選有力候補の小泉進次郎氏》政治と距離を置いてきた妻・滝川クリステルの変化、服装に込められた“首相夫人”への思い 
女性セブン
ヘアメイク女性と同棲が報じられた坂口健太郎と、親密な関係性だったという永野芽郁
《初共演で懐いて》坂口健太郎と永野芽郁、ふたりで“グラスを重ねた夜”に…「めい」「けん兄」と呼び合う関係に見られた変化
NEWSポストセブン
千葉県警察本部庁舎(時事通信フォト)
刑務所内で同部屋の受刑者を殺害した無期懲役囚 有罪判決受けた性的暴行事件で練っていた“おぞましい計画”
NEWSポストセブン
秋篠宮家の長男・悠仁さまの成年式が行われた(2025年9月6日、写真/宮内庁提供)
《「父子相伝がない」の指摘》悠仁さまはいつ「天皇」になる準備を始めるのか…大学でサークル活動を謳歌するなか「皇位継承者としての自覚が強まるかは疑問」の声も
週刊ポスト
ヘアメイク女性と同棲が報じられた坂口健太郎と、親密な関係性だったという永野芽郁
《「めい〜!」と親しげに呼びかけて》坂口健太郎に一般女性との同棲報道も、同時期に永野芽郁との“極秘”イベント参加「親密な関係性があった」
NEWSポストセブン
2泊3日の日程で新潟県を訪問された愛子さま(2025年9月8日、撮影/JMPA)
《雅子さまが23年前に使用されたバッグも》愛子さま、新潟県のご公務で披露した“母親譲り”コーデ 小物使い、オールホワイトコーデなども
NEWSポストセブン
すべり台で水着…ニコニコの板野友(Youtubeより)
【すべり台で水着…ニコニコの板野友美】話題の自宅巨大プールのお値段 取り扱い業者は「あくまでお子さま用なので…」 子どもと過ごす“ともちん”の幸せライフ
NEWSポストセブン