国内

正社員と非正規雇用の生涯収入格差は約1億6034万円との試算

 2013年の新卒者が正社員になるか非正規雇用になるかで、どれだけ生涯収入格差があるのだろうか。

 厚生労働省の賃金統計やその他のデータをもとに試算すると、20代正社員の年収は約384万円で、同世代の非正規雇用者は約262万円。その収入格差は年齢が上がるごとに拡大していき、80歳の段階では1億6034万円に及ぶ。こうした事態に警鐘を鳴らすのは、人事コンサルタントの城繁幸氏である。

 * * *
 1990年代以降、非正規雇用の割合は増え続けてきた。2011年は役員を除く雇用者(男女計)4918万人のうち、正規の職員・従業員は3185万人で前年に比べ25万人減少した一方、非正規の職員・従業員は1733万人と48万人増加した(総務省統計局「労働力調査 平成23年平均<速報>結果」より)。

 つまり表の左側の正社員の地位を持つ人間は減り、右側の非正規雇用の割合がどんどん増えている。この傾向は今後も続き、格差の下位層拡大が続くと予想される。

 問題は収入格差が必ずしも能力によって決まっていないことだ。言ってみれば「身分制」であり、人生という“すごろく”の入り口に立った時点で、生涯収入のレベルが決まってしまう。フェアな仕組みとはとても言えない。

 この現実は歪んだ「日本型雇用」によってもたらされる。若者の就職難の背景には、既得権を持つ年長正社員の存在がある。彼らが死守したいのは定年まで安泰となる終身雇用、賃下げが難しい年功序列賃金のシステムだ。

 不況下でその仕組みを維持するために、新規採用される若者の正社員はどんどん減り、非正規から正社員に変わる望みも薄れる。一部の若者のみが新卒時に既得権側に滑り込み、残りは仕組みの矛盾を全て押し付けられることになる。

「身分」が固定化された非正規雇用の生活は苦しい。30歳くらいまではそれほど差はないものの、その後、非正規の収入はほとんど増えない。

 結婚や子育ての費用を捻出することは容易ではなく、さらに50歳を過ぎると働き口が極端に少なくなる。派遣社員をはじめ、製造業、販売員の募集も事実上30代が上限だ。

 今の若い非正規雇用者が50歳以降になった時には、生活保護に雪崩れ込む者が続出するだろう。

※SAPIO2013年2月号



関連キーワード

関連記事

トピックス

高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
阿部なつき(C)Go Nagai/Dynamic Planning‐DMM
“令和の峰不二子”こと9頭身グラドル・阿部なつき「リアル・キューティーハニー」に挑戦の心境語る 「明るくて素直でポジティブなところと、お尻が小さめなところが似てるかも」
週刊ポスト
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン