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重要視される日銀の「独立性」 なぜ必要なのかその根拠とは

 日本銀行は1月22日の金融政策決定会合で、消費者物価の2%上昇を目指す「インフレ目標」の導入と、 2014年から無期限の新たな金融緩和策を決めた。日銀法改正をちらつかせた安倍晋三首相の圧力に屈した格好である。

 日銀はこれまで中央銀行の「独立性」を守り続けてきたが、それが担保されたのは、実はわずか15年前のことである。それまでの日銀法は戦時中の1942年に制定されたもので、国家統制色の濃い内容になっていた。それが1997年に全面改正され、翌1998年4月「独立性」と金融政策決定過程の「透明性」という2つの理念を柱とする新日銀法が施行されたのである。

 旧日銀法にあった「内閣による総裁解任権」も廃され、日銀総裁は「その意に反して解任されることがない」と明記された。日銀は悲願であった先進国の中央銀行なら当たり前の「独立性」を、ようやく手に入れたのである。

 なぜ「独立性」は必要なのか。過去、財政危機に陥った国々が野放図に紙幣を発行させ、インフレを引き起こしてきたからだ。第一次大戦後のドイツで起きたパン1個1兆マルクというハイパーインフレはあまりに有名だ。

 こうして確立された日銀の「独立性」だが、その後批判が相次ぐ。2000年のゼロ金利解除や2006年の量的緩和解除が早すぎて長期デフレを引き起こしたという批判や、2008年のリーマン・ショック直後の世界の中央銀行による協調利下げに加わらず急激な円高を招いたという指摘である。

 だから安倍首相は日銀にインフレ目標の設定と大胆な金融緩和を迫ったわけだが、IMF(国際通貨基金)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事はインフレ目標の導入要請について「中央銀行の独立性が確保されている限り、好ましく興味深い計画だ」と述べている。逆にいえば、日銀の独立性が確保されなくなったら容認できない、ということだ。

 かつて日銀総裁は大蔵省OBと日銀OBが交代で務める“たすき掛け人事”が続いていたが、1998年の新日銀法施行以降は3代続けて日銀OBが就任している。4月8日に任期満了となる白川方明総裁の後任人事について安倍首相は「これまでとは次元の違う金融政策」を実行できることを条件にしている。総裁人事は今後も日銀の独立性が確保されるか否かの分かれ目となる。

※週刊ポスト2013年2月8日号

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