国内

小沢一郎氏「もう一度やってやれないことはない」決意新たに

 昨年12月の総選挙で、小沢一郎氏は自らの政治史における歴史的大惨敗を喫した。泣いても吠えても、この事実と現実は動かない。『小沢一郎 嫌われる伝説』著者で政治ジャーナリストの渡辺乾介氏が「敗軍の将」の胸の内を質した。

──あなたはかねてから、明治の元勲の中では近代国家の礎をつくった大久保利通の合理主義を非常に評価してきたが、今のあなたは西郷隆盛の心境になっているんじゃないか。明治維新の立役者となりながら、その後の政治の流れの中で、下野して、反乱を起こして、最後は……。そんなことを感じます。

小沢:そう言われてみると、そんな気持ちが半分くらいあります。

 しかし明治維新では、薩摩が少数派になったり、長州が少数派になったりと、いろいろな経過を経て、最後は大同団結して幕藩体制を倒した。あの時は黒船が来航してから明治維新まで15年かかったんです。私が自民党を出てから、ちょうど20年が経ちました。その経過からいうと、そろそろ維新が実現してもいい頃です。

──ん? 維新、維新というと、何だか話が紛らわしいですね(笑い)。

小沢:そろそろ(政治の)文明開化が完成していい頃ですが、少し長引いている。明治維新を目指して、もう一度頑張らないと夜が明けないかな、という心境です。私の周囲は、青菜に塩みたいになっているけれども、考えてみると、ちょうど民主党と自由党の合併以前に戻ったということなんです。

 あの時、自由党は20人前後ですし、確か民主党も110人くらいだった。新聞の政党支持率調査でも、民主党が7%か8%くらいで、わが方が2%前後。そんな状況から始まって政権交代を実現したのですから、もう一度やってやれないことはないだろうというふうに思って、決意を新たにしているところです。

──西郷のように幕をおろすわけにはいかない?

小沢:城山(西郷が西南戦争に敗れて自決した地)には、まだちょっと早いな。

──しかし、あなたの政治改革の歩みは賽の河原の石積みで、積んではまた崩すという繰り返しです。

小沢:自分で崩しているつもりはないんだけれども、もう少しうまく積み上げなくちゃいけないですね。

──自民党時代にあなたの盟友だった梶山静六さんが、創政会旗揚げ(*注)の時、煮え切らない竹下登さんに、「国民にも我々にも政治家に対する期待権というものがある。あなたが決断できずに、その期待権に背くようなら、私はもうこの場から去る」と言ったというエピソードがある。

 今は沈殿しているかもしれないけれども、国民には滔々と流れてきた小沢一郎という政治家に対する期待権があるはずです。それにこれからどう応えるのか。あるいは、もう期待権なんてご放免願いたいのか。

小沢:先ほどの西郷さんの話ですけれど、城山の前に中央政府とうまくいかなくなって故郷に帰った。僕も似たような気持ちはありますね。自分が先頭に立って、せっかく政権まで取ったのに、どうしようもない状況で政権まで失ってしまった。

 もうばかばかしいから故郷に帰ろうという気持ちが、さっき言ったように半分くらい去来するけれど、ここで放棄したのでは、いろいろと思ってくれる皆さんを裏切ることになる。自分の政治生命、命の続く限り完成させないといけないと、気を取り直して頑張ろうと思っているところです。

【*注】1985年に自民党の最大派閥だった田中派内で起きた世代交代クーデター。派閥領袖の田中角栄・元首相がロッキード事件で一審有罪判決を受けた後、派内の若手が世代交代を求めて竹下登氏に勉強会結成を迫った。田中氏が切り崩しに動く中、竹下氏は創政会を旗揚げ。田中氏は手塩に掛けた小沢一郎氏、梶山静六氏、羽田孜氏ら子飼いの議員が参加したことにショックを受け、ほどなく脳梗塞に倒れた。

※週刊ポスト2013年3月1日号

関連記事

トピックス

AIの技術で遭遇リスクを可視化する「クマ遭遇AI予測マップ」
AIを活用し遭遇リスクを可視化した「クマ遭遇AI予測マップ」から見えてくるもの 遭遇確率が高いのは「山と川に挟まれた住宅周辺」、“過疎化”も重要なキーワードに
週刊ポスト
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト