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ドコモとコラボの少女漫画「カノ嘘」 大人もハマる魅力とは

渋谷をジャックしたこのバンドの名前は?

■女子高生認知度100%作家の最新作が渋谷ジャック

 ここに掲載したコミックのワンシーンが現実になってしまったように、今、渋谷の街頭ビジョンや駅周辺には、どこかで見覚えのあるキノコの帽子をかぶった、あるロックバンドの映像やポスターがあふれている。このコミックは青木琴美さんの『カノジョは嘘を愛しすぎてる』(小学館・月刊『Cheese!』連載中)、通称「カノ嘘」。実はいま、渋谷を席巻しているのは、このカノ嘘に登場する『CRUDE PLAY(クリュードプレイ=クリプレ)』というバンドのメンバーたちだ。

 青木さんは2009年に井上真央、岡田将生主演で映画化された『僕の初恋をキミに捧ぐ』の作者でもある。映画公開時に東宝が行なった調査では、同作の「女子高生認知度」が100%(!)という超人気作家。「カノ嘘」の単行本も現在10巻まで刊行されており、累計250万部(8巻刊行時点)以上の大ヒットを記録している。まさに「知らないのは大人だけ」といえるほどの快進撃中なのだ。

 それにしても、いかに人気作家の最新作とはいえ、大人にはあまり知られていない少女漫画のキャラが渋谷の街を埋め尽くすのはどうしたことか? 実はこれ、「カノ嘘×ドコモ」が展開する『応援学割』のコラボキャンペーン。リアルなアイドルであるAKB48(応援学割のCMキャラ)と同じように「クリプレ」のメンバーがドコモダケの帽子をかぶり、漫画の舞台でもある渋谷を席巻している。

 さらに、「カノ嘘」を連載する『Cheese!』誌上(発売中の2013年4月号)ではCMやポスターに「クリプレ」が出演するストーリーの作品を掲載。コミック動画などがダウンロードできる「カノ嘘×ドコモ」応援学割コラボのWEBサイトなど、多彩な仕掛けで楽しませてくれる。そして、そのCMやポスターのシーンが、現実の渋谷の屋外ビジョンで躍動するというわけだ。

 そういえば最近、ジャン・レノが『ドラえもん』を演じるトヨタ自動車のCMや、日産自動車のファミリーカーが『ONE PIECE(ワンピース)』とコラボしたキャンペーンなど、リアルとの境界線を飛び越えた漫画キャラの活躍が目立っている。しかしながら、『ドラえもん』のような国民的な人気キャラとは異なる「カノ嘘」が、なぜドコモが展開する『応援学割』キャラに大抜擢されたのだろう。

『Cheese!』誌連載の担当者でもある畑中雅美副編集長は、その理由を「女子高生を中心に、作中のキャラクターたちがアイドル的な人気をもっていること。そして、世代を超えて共感できる作品だからこそでしょう」と語る。

「世代を超える」といっても、普通の大人たちの認知度は低いと思われるのだが、実際には、大人の、しかも男性のファンは意外に多く、サイン会には女子高生に混じってきちんとした身なりの大の男が並ぶという。余談ではあるが、漫画誌『モーニング』(講談社)の編集長も、「カノ嘘」について〈私のようなおっさんが読んでも当然のように面白いもんは面白いのですが、でも実際にはおっさんはなかなか読まないですよね? どうやったら読むようになる?〉とツイッターでつぶやいているほどだ。

■「世代を超えたコミュニケーションの『題材』に」

「カノ嘘」は、普段少女漫画に馴染みが少ない大人が読んでも、惹きつけられるモノがあるようで、畑中副編集長は、その魅力について「作中に描かれる機材や業界人間模様などのリアリティ」だと分析する。

 実際、作者の青木さんは、少女漫画家には珍しいほど綿密な取材を重ねてこの作品を描いている。登場人物が、社会の現実を突きつけるような毒のある台詞を吐くのも「カノ嘘」らしさを支えるリアリティ。大人の読者は密かに仕込まれたリアリティに引き込まれ、また、少女たちはちょっと背伸びして憧れの業界や人生を疑似体験しつつ、大人と女子高生の恋物語に酔いしれる──。

 性別や世代それぞれの楽しみ方で引き込まれる面白さが「カノ嘘」の強み。だからこそ、学生の子どもと一緒に家族にも割引が適用される、つまり家族揃って利用すべきサービスである『応援学割』のキャラクターに選ばれた、ということだ。

 そもそも、思春期を迎えた子どもと親のコミュニケーションは難しい。ときには父親から子どもに共通の話題をつくる必要もあるだろうし、思春期の子どもが大好きな「カノ嘘」を親も読み、それぞれに感じた面白さを共通の話題として語り合うことは、親子のコミュニケーションを深める絶好の方法になるだろう。

 仕事に追われる大人としては「少女漫画なんて知らないよ」と開き直りたいところでもあるが、『Cheese!』誌の武者正昭編集長は「カノ嘘は大人にこそ読んで欲しい作品です」と強調する。さらに、「世の中の大人たちがこの作品の非凡さに気付いて読んでくれたら、世代を超えたコミュニケーションのすばらしい『題材』になるはずです」と言葉は熱い。

■2013年は映画化も予定されさらなるブームの気配

 誌面から渋谷の街に飛び出したカノ嘘のキャラクター。「作品のパワーは少女漫画の枠を超えている」という武者編集長の言葉を裏付けるように、2013年はさらなるブームを起こしそうな気配が漂っている。というのも……。

 まずは、冒頭でも紹介した「カノ嘘×ドコモ」の応援学割コラボキャンペーン。3月7日まで渋谷の屋外ビジョン、また駅ポスター(随時)などで「クリプレ×ドコモの応援学割」がコラボしたビジュアルが展開される。今まで「カノ嘘」を知らなかった、渋谷を歩く大人たちの目の前に「クリプレ」が颯爽と姿を見せるのだ。

 さらに、今年は「カノ嘘」の映画化も予定されていて、着々と公開への秒読みが始まっている。『僕は妹に恋をする』、『僕の初恋をキミに捧ぐ』に続き3連続の映画化となる青木作品だ。

「連載1回目がスタートした直後から映像化のオファーが相次ぎました。いくら人気作家でも異例のこと。作品の魅力が、映画化決定権をもつ大人の心に響いた証拠でしょう」(畑中副編集長)

 ヒロインのリコ役は、すでに一般公募オーディションで選ばれている。シンデレラガールの詳細はまだ明らかにされていないが、クリプレが漫画からリアルへ飛び出したように、今度は「カノ嘘」からリアルな女優が誕生する。

「スマホなんて面倒だ」とか、「カノ嘘なんて知らないよ」など、いいものを見過ごしたまま開き直っていてはもったいない。パパもママも、まずは「カノ嘘」を一読してはどうか。アキとリコ(作中の主人公カップル)の恋の行方や『応援学割』といった共通の話題が、家族の絆をさらに深めてくれるだろう。

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