ライフ

鎌田實医師 ナミビアでブラッド・ピットが座った椅子に座った

 ベストセラー『がんばらない』の著者で諏訪中央病院名誉院長の鎌田實氏は、チェルノブイリの子供たちへの医療支援などに取り組むとともに、震災後は被災地をサポートする活動を行っている。その鎌田氏が、アフリカを訪問した際に見たいろいろな愛のかたちについて語る。

 * * *
 アフリカへの旅行中、僕はナミビアを訪れた。昨年末の『紅白歌合戦』で、歌手のMISIAが、この国のナミブ砂漠から生放送で2曲歌った場所である。世界でいちばん美しい砂漠といわれ、実際、噂に違わない美しい場所だった。

 そのほど近くに位置するバーニング・ショアに小さなロッジがあり、僕はそこに泊まった。

 このロッジは、ハリウッドの人気俳優、ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリー夫妻が、6か月間、借り切って滞在したらしい。夫妻は、この場所で愛を育み、子どもを出産したのだとか。

 ブラピが座ったという椅子に腰かけてぼんやりと海を眺めた。残念ながら、僕は、愛は育まなかったが、生ガキとムール貝をお腹いっぱい食べた。

 このナミビアには、バンツー族という部族がいる。かつては、ニカウさんで有名になったブッシュマンと呼ばれたサン族が中心だった。しかし、次第にこのバンツー族が勢力を持つようになり、サン族は追いやられていった。

 彼らは、アフリカの都市を除く、地方に住む部族がそうであるように、一夫多妻制だ。僕が出会った一家は、19歳から23歳までの若い妻たちが5人もいた。一家は遊牧しながら暮らしている。家畜の牛が草を食べ尽くすと、次の場所に移っていくのだという。

 5人の妻たちは、一家の3人の子どもを協力して育てている。どの妻の子どもであっても、一人の夫から生まれたみんなの子であるから一緒に育てる。そこには競争もなければ嫉妬もない。本当かなと疑った。質問をしたが、本当のことだという。しかし、本人も気づいていない意識の下層に渦巻く思いがあるのではないかと、いまも僕は疑っている。

 愛のかたちは、いろいろある。いろいろあっていいのだと、改めて自分に言い聞かせた。

 バンツー系のヒンバ族は、赤い泥を上手に暮らしに取り入れて生活をしている。お風呂には入らず、この泥を体にこすり付けるのが、風呂の代わりなのだという。

 髪の毛も2センチメートルくらいの束にして、赤い泥で固めてセットしている。迫力ある肉食系女子という感じの彼女たちと写真を撮った。

 ボツワナでも、若い女性3人に囲まれた。彼女たちがいった。

「一緒に写真を撮ってください」

 なんとも悩ましく、官能的なポーズ。なぜか、行く先々で一緒に写真を撮ってほしいと頼まれるのだ。

 彼女たちは、現地ではめったに見かけない日本人に、積極的に声をかけてきてくれたのだろう。男からでも女からでも、モーションを起こすことが大事なのだと思った。

※週刊ポスト2013年3月8日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン