ライフ

“人斬り以蔵”は写真・肖像画の類が一切なく実像は未だに不明

 幕末期、四大人斬りの一人として恐れられたのが“人斬り以蔵”こと岡田以蔵である。非凡な剣の腕は、敵を闇に葬るために使われていった。

 土佐勤王党の暗殺部隊は、党首・武市瑞山(半平太)の命令で、尊王攘夷派の弾圧に関与した者をターゲットに殺戮を繰り返していた。以蔵は、土佐佐幕派トップ・吉田東洋の暗殺事件を捜査していた井上佐一郎を皮切りに、約半年の間に9件の暗殺および生き晒しに関与したとされる。以蔵が殺しに使った刀は『肥前忠広』という、坂本竜馬から譲り受けた名刀であった。

 天誅と称して何人もの命を奪い、首を晒すなどしたが、人の命を救ったこともあった。

 以蔵の行動を改めようとした竜馬が、自らの師であり、開国論者の勝海舟の護衛を依頼したのだ。以蔵が護衛を引き受けたのは同郷の竜馬に対して一目置いていたからであろう。

 ある夜、海舟と以蔵が京都の町を歩いていると突如3人の暴漢が襲ってきた。以蔵は1人を真っ二つに斬ると、残り2人はほうほうのていで逃走。後日、海舟が「人を殺すのをたしなんではいけない。先日のような行動は改めた方がいい」と忠告すると、以蔵に「あの時私がいなかったら、先生の首は既に飛んでしまっていましょう」と返され、「これには俺も一言も無かった」と述懐している。

 その後の政変で隆盛を誇っていた尊王攘夷派は急激に失速し、以蔵も追われる身となり落ちぶれていく。最後は強盗の罪で逮捕され、土佐藩に引き渡されてしまう。信じていた瑞山に裏切られ、拷問の末に自白。打ち首に処せられた。享年28。高知県庁によると、写真・肖像画の類は一切残されておらず、その実像は未だに不明だ。

※週刊ポスト2013年3月22日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷翔平選手、妻・真美子さんの“デコピンコーデ”が話題に(Xより)
《大谷選手の隣で“控えめ”スマイル》真美子さん、MVP受賞の場で披露の“デコピン色ワンピ”は入手困難品…ブランドが回答「ブティックにも一般のお客様から問い合わせを頂いています」
NEWSポストセブン
佳子さまの“ショッキングピンク”のドレスが話題に(時事通信フォト)
《5万円超の“蛍光ピンク服”》佳子さまがお召しになった“推しブランド”…過去にもロイヤルブルーの “イロチ”ドレス、ブラジル訪問では「カメリアワンピース」が話題に
NEWSポストセブン
「横浜アンパンマンこどもミュージアム」でパパ同士のケンカが拡散された(目撃者提供)
《フル動画入手》アンパンマンショー“パパ同士のケンカ”のきっかけは戦慄の頭突き…目撃者が語る 施設側は「今後もスタッフ一丸となって対応」
NEWSポストセブン
大谷翔平を支え続けた真美子さん
《大谷翔平よりもスゴイ?》真美子さんの完璧“MVP妻”伝説「奥様会へのお土産は1万5000円のケーキ」「パレードでスポンサー企業のペットボトル」…“夫婦でCM共演”への期待も
週刊ポスト
結婚を発表したPerfumeの“あ~ちゃん”こと西脇綾香(時事通信フォト)
「夫婦別姓を日本でも取り入れて」 Perfume・あ〜ちゃん、ポーター創業の“吉田家”入りでファンが思い返した過去発言
NEWSポストセブン
(写真右/Getty Images、左・撮影/横田紋子)
高市早苗首相が異例の“買春行為の罰則化の検討”に言及 世界では“買う側”に罰則を科すのが先進国のスタンダード 日本の法律が抱える構造的な矛盾 
女性セブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
【本人が語った「大事な存在」】水上恒司(26)、初ロマンスは“マギー似”の年上女性 直撃に「別に隠すようなことではないと思うので」と堂々宣言
NEWSポストセブン
劉勁松・中国外務省アジア局長(時事通信フォト)
「普段はそういったことはしない人」中国外交官の“両手ポケットイン”動画が拡散、日本側に「頭下げ」疑惑…中国側の“パフォーマンス”との見方も
NEWSポストセブン
佳子さまの「多幸感メイク」驚きの声(2025年11月9日、写真/JMPA)
《最旬の「多幸感メイク」に驚きの声》佳子さま、“ふわふわ清楚ワンピース”の装いでメイクの印象を一変させていた 美容関係者は「この“すっぴん風”はまさに今季のトレンド」と称賛
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が真剣交際していることがわかった
水上恒司(26)『中学聖日記』から7年…マギー似美女と“庶民派スーパーデート” 取材に「はい、お付き合いしてます」とコメント
NEWSポストセブン
ラオスに滞在中の天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《ラオスの民族衣装も》愛子さま、動きやすいパンツスタイルでご視察 現地に寄り添うお気持ちあふれるコーデ
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン