国際情報

日本の対中国外交「弱腰を嘆く必要などない」と専門家が指摘

 近くて遠い国、日本人にとって最近の中国はまさにそんなイメージだ。だが、中国の情勢に詳しいジャーナリスト・富坂聰氏の見方は少し異なっている。

 * * *
 日本の対中国外交は成功している――。

 そんなことをいえばほとんどの日本人は首をかしげるに違いない。国内には「弱腰外交」を嘆き「毅然とした外交」を求める声があふれているからだ。だが本当に日本の対中国外交は嘆くべき状況にあるのだろうか。

 私は近著『間違いだらけの対中国戦略』(新人物往来社)で、子細に分析した。

 まず、日本の対中貿易である。日本は、反日デモが荒れ狂った2012年は例外としても、毎年3兆円前後の黒字を積み上げ、あの抜け目のない中国を完全にお得意さんにしている。

 しかも中国経済をけん引する重要なエンジンである輸出では、日本から輸入する基幹部品がなければ造ることができないものが全体の6割を占めている。つまり、中国が輸出で儲けようとすれば、自然に対日貿易赤字が膨らむという構造が日中貿易のなかにビルトインされている。

 技術が盗まれると心配する声があるが、技術は上から下に流れるのが自然であり、かつては日本自身もその恩恵に与ってきた。さらに重要なことは日本が技術移転をやらなければ、欧米が喜んでやり、日本に代わって利益を得るだろうということだ。

 台頭する中国に日本のポジションを奪われると心配する声も日本には多いが、実際に「中国ブランド」が先進国の人々の生活の中に浸透している事実はない。

 このことは中国が依然「大きな下請」であることを意味し、一旦、日本など世界に通用するブランドを多く抱えている国で「もう中国ではない」との空気が広がり始めれば、中国の経済には深刻な打撃を与えかねないという脆弱な構造を抱えていることになる。

 ここ数年中国で盛んに言われる「中所得国の罠」とは、まさに中国が「選ばれなくなる日」を心配して使われる言葉だ。

 ほんの少し状況を冷静に見るだけで、これまでとまったく違った日中の関係が見えてくるのではないだろうか。イメージで語られるほど日中関係は日本にマイナスとはいえないのだ。

 ことは尖閣問題でも同じである。中国が尖閣諸島の領有権を突如として主張し始めたのは行儀の悪い行ないに違いない。ただ国際社会には国内法ほど明確な決まりはなく、警察の役割をする組織もないため、さまざまなところに隙間があるというだけのことだ。それがたとえ微小な隙間であっても、それを見たら割り込もうとするのは国際社会の常識である。

 尖閣諸島周辺ではエネルギー埋蔵の可能性が指摘されたのだからなおさらだろう。

 日本が考えなければならないのは、中国の相手がもし日本でなかったら、中国は同じような振る舞いをしなかったのかという点だ。

 結論をいえば、やはり同じことが起こった可能性が高い。それを日本が少々肩をいからせたところで状況が変わったと考えるのはあまりに楽観的過ぎると言わざるを得ないのだ。

 そもそも力で相手を屈服させることの効果、現実性を考えれば、従来、日本がやってきた対中外交以上に理想的な外交は簡単には思いつかないのではないだろうか。

 外から見れば弱そうに見えて、いつのまにか世界で最も豊かになっている――。実は、中国が目指す韜晦外交(力をひけらかすことなく静かに大きくなることを目指す外交)を本当に具現化したのは、日本だったのかもしれない。少なくとも、日本がそれほど自虐的に落ち込むほどのことではないのだ。

関連キーワード

トピックス

妻とは2015年に結婚した国分太一
《セクハラに該当する行為》TOKIO・国分太一、元テレビ局員の年下妻への“裏切り”「調子に乗るなと言ってくれる」存在
NEWSポストセブン
闇バイトにはさまざまなリスクが…(写真/ゲッティイメージズ)
《警察の仮想身分捜査導入》SNSで闇バイトの求人が減少する一方で増える”怪しげな投稿” 「闇バイト」ではないキーワードが浮上
NEWSポストセブン
無期限の活動休止を発表した国分太一
「給料もらっているんだからさ〜」国分太一、若手スタッフが気遣った“良かれと思って”発言 副社長としては「即レス・フッ軽」で業界関係者から高評価
NEWSポストセブン
ブラジル訪問を終えられた佳子さま(時事通信フォト)
《クッキーにケーキ、ゼリー菓子を…》佳子さま、ブラジル国内線のエコノミー席に居合わせた乗客が明かした機内での様子
NEWSポストセブン
1985年春、ハワイにて。ファースト写真集撮影時
《突然の訃報に「我慢してください」》“芸能界の父”が明かした中山美穂さんの最期、「警察から帰された美穂との対面」と検死の結果
NEWSポストセブン
”アナウンサーらしくないアナウンサー“と評判
「笑顔でピッタリ腕を絡ませて…」元NMB48アイドルアナ・瀧山あかねと「BreakingDown」エース・細川一颯の“腕組み同棲愛”《直撃に「まさしくタイプです(笑)」》
NEWSポストセブン
『ザ!鉄腕!DASH!!』降板が決まったTOKIOの国分太一(右/番組の公式サイトより)
《TOKIO・国分太一が無期限活動休止》「演者とスタッフは“独特の距離感”だった」関係者が明かす『鉄腕DASH』現場の“特殊な事情”
NEWSポストセブン
グラビアのオファーも多いと言われる中川安奈アナ(本人のインスタグラムより)
《SNSで“インナーちらり笑”》元NHK中川安奈アナが森香澄の強力ライバルに あざとキャラと確かなアナウンス技術で「ポテンシャルは森香澄以上」との指摘
週刊ポスト
『ザ!鉄腕!DASH!!』降板が決まったTOKIOの国分太一(右/番組の公式サイトより)
《スタッフに写真おねだりか》TOKIO・国分太一は「コンプライアンス上の問題行為が複数あった」…日本テレビに問い合わせた結果
NEWSポストセブン
不倫が報じられた錦織圭、妻の観月あこ(Instagramより)
《錦織圭・モデル女性と不倫疑惑報道》反対を押し切って結婚した妻・観月あことの“最近の関係” 錦織は「産んでくれたお母さんに優しく接することを心がけましょう」発言も
NEWSポストセブン
お疲れのご様子の雅子さま(2025年、沖縄県那覇市。撮影/JMPA) 
雅子さまにささやかれる体調不安、沖縄訪問時にもお疲れの様子 愛子さまが“異変”を察知し、とっさに助け舟を出される場面も
女性セブン
インドのナレンドラ・モディ首相とヨグマタ・相川圭子氏(2023年の国際ヨガデー)
ヨグマタ・相川圭子氏、ニューヨーク国連本部で「国際ヨガデー」に参加 4月のNY国連協会映画祭では高校銃乱射事件の生存者へ“愛の祝福”も
NEWSポストセブン