国内

青木ヶ原樹海 二度と出られぬは俗説で携帯も圏外にはならず

 警察庁の統計では「自殺者が3万人を切った」と報告された。久しぶりに目に見えて減少したとはいえ、いまだ交通事故死者の7倍もの人が亡くなっている。月別自殺者数がもっとも多いとの理由から3月に設定されている「自殺対策強化月間」に、作家の山藤章一郎氏が、富士山麓の青木ヶ原樹海の様子をルポ漫画にまとめた村田らむ氏にたずねた。

 * * *
「酔っぱらったみたいにぐてっと、首を垂れた男がぶらさがってました。ついさっきのことか、夜露に濡れていない。カラのコンビニ弁当、ウイスキーの小瓶、煙草、ビタミンドリンクが足許にちらばってる。最期の晩餐ですね。

 ジーンズにポロシャツの20代、まだ若い。触れたら温かかったでしょうか。冥福を祈り、シャッターを切りました」

 山梨県富士河口湖町・青木ヶ原樹海。〈ルポ漫画〉の村田らむ氏が遭遇した若者の首吊り遺体である。

「ポケットから封筒が覗いてました。遺書でしょうか。しかしさすがに見られない。樹海は方位磁石も利く、スマホのナビも使える。その場で警察に通報し、入った場所のイバラの木に赤いテープを巻いて案内しました」

 村田氏は、『ホームレス大図鑑』(竹書房)など潜入した現場の実態を体当たりルポして漫画に描く。

「樹海は二度と出てこられない、というのは俗説です。近くにゴルフ場があり、携帯も圏外にはならない。1時間ほど歩いたらどこかの道に出てしまいます。1時間といっても、でこぼこした岩と、灌木と大きな樹木が茂った道なので、2、300メートルしか進んでいなかったりします。

 現在は自然公園法で入林は禁じられていますが、もう何度も入りました。車で奥深くまで行ける場所や、風穴と氷穴を結ぶ林道の目印ポイントから、自殺が多い現場に行き着けます」

 遺体はなくても、行くたびに遺書、数日過ごしたらしきテント、靴、缶ビール、睡眠薬のピルケース、『完全自殺マニュアル』の樹海マップなどが落ちている。

 すぐ向こうを観光バスが走りぬけている。その道路脇の自殺防止の看板に、落書きがある。

『東京で死ね』

「夜は怖いですよ。墨を塗り込めたような闇に目をふさがれて、右も左もない。永遠に出られない恐怖に駆られます。ここでテントを張って死ぬか生きるか。苦しみぬいた果て、人生の最後を過ごす人の胸の内に粛然とします」

※週刊ポスト2013年4月12日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

無期限の活動休止を発表した国分太一
「給料もらっているんだからさ〜」国分太一、若手スタッフが気遣った“良かれと思って”発言 副社長としては「即レス・フッ軽」で業界関係者から高評価
NEWSポストセブン
”アナウンサーらしくないアナウンサー“と評判
「笑顔でピッタリ腕を絡ませて…」元NMB48アイドルアナ・瀧山あかねと「BreakingDown」エース・細川一颯の“腕組み同棲愛”《直撃に「まさしくタイプです(笑)」》
NEWSポストセブン
『ザ!鉄腕!DASH!!』降板が決まったTOKIOの国分太一(右/番組の公式サイトより)
《TOKIO・国分太一が無期限活動休止》「演者とスタッフは“独特の距離感”だった」関係者が明かす『鉄腕DASH』現場の“特殊な事情”
NEWSポストセブン
『ザ!鉄腕!DASH!!』降板が決まったTOKIOの国分太一(右/番組の公式サイトより)
《スタッフに写真おねだりか》TOKIO・国分太一は「コンプライアンス上の問題行為が複数あった」…日本テレビに問い合わせた結果
NEWSポストセブン
TOKIOの国分太一
《日テレで緊急会見の意味は》TOKIO国分太一がコンプラ違反で活動休止へ 「番組降板」「副社長自らスキャンダル」の衝撃
NEWSポストセブン
悠仁さまの大学進学で複雑な心境の紀子さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、今年秋の園遊会に“最速デビュー”の可能性 紀子さまの「露出を増やしたい」との思いも影響か
女性セブン
グラビアのオファーも多いと言われる中川安奈アナ(本人のインスタグラムより)
《SNSで“インナーちらり笑”》元NHK中川安奈アナが森香澄の強力ライバルに あざとキャラと確かなアナウンス技術で「ポテンシャルは森香澄以上」との指摘
週刊ポスト
お疲れのご様子の雅子さま(2025年、沖縄県那覇市。撮影/JMPA) 
雅子さまにささやかれる体調不安、沖縄訪問時にもお疲れの様子 愛子さまが“異変”を察知し、とっさに助け舟を出される場面も
女性セブン
不倫が報じられた錦織圭、妻の観月あこ(Instagramより)
《錦織圭・モデル女性と不倫疑惑報道》反対を押し切って結婚した妻・観月あことの“最近の関係” 錦織は「産んでくれたお母さんに優しく接することを心がけましょう」発言も
NEWSポストセブン
不倫が報じられた錦織圭(AFP時事)
《美女モデルと不倫》妻・観月あこに「ブラックカード」を渡していた錦織圭が見せた“倹約不倫デート”「3000円のユニクロスウェットを着て駅前チェーン喫茶店で逢瀬」
NEWSポストセブン
永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《永野芽郁に新展開》二人三脚の“イケメンマネージャー”が不倫疑惑騒動のなかで退所していた…ショックの永野は「海外でリフレッシュ」も“犯人探し”に着手
NEWSポストセブン
“親友”との断絶が報じられた浅田真央(2019年)
《村上佳菜子と“断絶”報道》「親友といえど“損切り”した」と関係者…浅田真央がアイスショー『BEYOND』にかけた“熱い思い”と“過酷な舞台裏”
NEWSポストセブン