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十数億円を2年で使い果たした元社長が自らの金銭観披露の書

【書評】『お金が教えてくれること マイクロ起業で自由に生きる』家入一真/大和書房/ 1365円

【評者】森永卓郎(エコノミスト)

 時代が変わった。この本はそのことを物語っている。40編のショートストーリーは、明確な脈絡があるわけではない。だから、どこから、どの順で読んでも問題ない。内容がかぶっていたり、ぶつかっていたりもするが、それも問題ない。読み重ねていくうちに、著者の強烈な金銭観が伝わるからだ。

 著者は、史上最年少の29歳で上場を果たし、自社株を手放して、十数億円の資金を手にする。しかし、六本木や西麻布で豪遊、海外旅行、そしてベンチャーへの出資で、わずか二年で資金を使い果たす。それだけなら、よくある話だが、著者のすごいところは、そこでお金の本質を見極めたことだ。

 必要十分なお金があれば、それ以上あっても、大して幸せにはなれない。それを若いうちに気付いただけでも素晴らしいが、著者の新しいところは、普通に働いて、身の丈にあった暮らしをしようとは考えなかったところだ。

 大金を稼ごうとしなければ、我慢して宮仕えをしなくても、自らビジネスを始めることで稼げる。画期的なビジネスモデルは必要ない。いまあるビジネスをうまく組み合わせ、そこに自分らしさをちょっと加えるだけで十分だ。

 うまく行くかどうかは分からないが、とりあえずやってみる。事業資金がなくても構わない。ネットを通じて仲間から出資を募ればよいからだ。出資をしてくれる賛同者は、事業を始めれば、働き手にもなってくれるし、消費者にもなってくれる。

 だから、一番必要なのは、お金ではなく、自分のファンになってくれるフォロワーを増やすことだと著者は言う。フォロワーを増やすのに必要なことは、独自のストーリーだ。ネットの世界では、金儲けをしたいと言っても誰もついてこない。必要なのは、応援してくれる人を納得させるメッセージを発信することなのだ。

 本書がショートストーリーで構成されているのも、そこに理由があるのだろう。長々と説明しても誰も聞かない。感性に訴える短い表現が必要なのだ。大艦砲戦時代の終焉だ。

※週刊ポスト2013年4月19日号

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