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「里親制度」と「養子縁組制度」 法律上の違いを詳細に解説

 都内で働く43歳のA子さんは、1歳半になる娘を保育園に送り迎えするのが日課だ。生後5日で“我が家”に迎えた娘は、今では迎えに来たA子さんを見つけると、よちよちと駆け寄ってくるまでに成長した。

「熱を出して病院に連れて行くことも度々ですが、子育ての大変さを知るたびに親になれた喜びも味わっています」(A子さん)

 不妊治療を3年続けた末に体調を壊し、妊娠をあきらめ、その後、養子縁組で娘を授かったというA子さん。ママ友たちと子育ての話題を交わすA子さん親子の姿は、実の親子と何ら変わらない。

 こうした育ての親のことを「里親」と呼ぶ場合があるが、実際には「里親制度」と「養子縁組制度」には、その性格に違いがある。

「里親制度」は何らかの事情で家庭での養育が困難になった子供たちを、育てられない親の代わりに一時的に家庭内で子供を預かって養育する制度で、親権は生みの親に残ったままである。

 一方、養子縁組の場合には子の親権も育ての親に移譲され、戸籍の上でも子供の「親」となる。

 さらに、養子縁組の中にも2つの種類がある。「普通養子」の場合、年齢に制限はなく、役所への届け出だけで済むが、戸籍上は「養子」、「養女」と記される。普通養子には跡取りや相続に絡んだケースが多い。その最たる例が、夫が妻の親と養子縁組する「婿養子」。これは本来、婿を跡取りとするため、妻の家の嫡出子として推定相続人とするものだが、今日ではマスオさんのように嫁の一家に入って生活することと混同されている場合も多い。

 もう1つが、冒頭のA子さんのケースのように、実子として育てる「特別養子」だ。年間374件(2011年度)が成立しているという特別養子縁組の場合では、6歳未満の子を対象にし、戸籍上も「長男」、「長女」と記載される一方、家庭裁判所の審判が不可欠であったりと、普通養子以上に、親となる条件は厳しい。

 特別養子を希望する場合、自治体の児童相談所か、自治体に届けを出している民間の斡旋団体に相談することになる。児童相談所で養子縁組をする場合、厚労省の「里親委託ガイドライン」に準じて各都道府県が定めた要件を満たす必要がある。

 東京都では、25歳以上50歳未満の婚姻関係にある夫婦で、最低2室10畳以上の居室を有していることの他に、里親認定基準もクリアしなければならない。

「心身ともに健全であること」、「世帯の収入額が生活保護基準を原則上回っていること」などが挙げられ、過去に児童虐待や児童買春に係る行為で処罰されたことがないことも条件となる。

 これらの要件を満たし、「里親認定書」が発行され、特別養子縁組が可能となる。

※週刊ポスト2013年5月17日号

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