芸能

徳川家定は後継ぎ問題に悩まされうつ病になったと勝海舟解説

 外では「うつけ」のふりをしながら、妻である篤姫だけには本当の姿を見せた徳川家定。宮崎あおい主演の大河ドラマ「篤姫」で、堺雅人が演じた第13代将軍家定は「うつけ」ではないという新解釈でドラマが展開された。今までの通説と異なるこの解釈は、非現実的なものだったのか。みずから歴史番組の構成と司会を務める編集者・ライターの安田清人氏が、徳川家定の「うつけ」評価について考察する。

 * * *
 平成20年のNHK大河ドラマ〈篤姫〉は、主人公篤姫の夫で13代将軍家定が「うつけ」のふりをしていたという設定であった。家定が「うつけ」だったとの記録は確かに残っているが、ヒロインの相手役が「うつけ」では、確かに体裁は悪かろう。

 江戸城大奥に暮らす御台所たる篤姫は、幕府が滅び、追い立てられるように江戸城を去るまで、ほとんど大奥から出ることなく過ごした。日常的に顔を合わす相手も、実際には夫の家定か奥女中くらいのものだったろう。その夫が「うつけ」では、話の盛り上げようがないのはよくわかる。しかし、こうした「歴史の改変」は許されるのか。

 家定をどう描くかについては、番組制作スタッフと時代考証担当者との間でも議論があったらしい。〈篤姫〉の時代考証を担当した大石学氏(東京学芸大学教授)によれば、実は家定は「うつけ」ではなかったという説もあるという。

 家定の時代に大奥の女中を務めた佐々鎮子という女性が、明治中頃に東京帝国大学史談会のインタビューを受けている。そのなかで彼女は、家定は疳癪もちではあったものの、能を舞ったり父親の12代将軍家慶の看病をしたりと、日常生活に支障はなかったと証言している。

 勝海舟も、家定は思慮深い人物だったが、家臣が後継をどうするかについてうるさく進言したためにうつ病になってしまったと書いている。

 大石氏によれば、家定が「うつけ」だとする説も、そうではなかったとする説もあり、その中間とでも言うべき説、すなわち「うつけ」ではなかったが、ペリーの黒船来航という国難に将軍として向き合うには力量不足であったとみる説もあるという。〈篤姫〉では、この2番目の説を採用したということなのだ。

■安田清人(やすだ・きよひと)/1968年、福島県生まれ。月刊誌『歴史読本』編集者を経て、現在は編集プロダクション三猿舎代表。共著に『名家老とダメ家老』『世界の宗教 知れば知るほど』『時代考証学ことはじめ』など。BS11『歴史のもしも』の番組構成&司会を務めるなど、歴史に関わる仕事ならなんでもこなす。

※週刊ポスト2013年5月31日号

関連記事

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン