ビジネス

「無線操縦できる世界最小ヘリコプター」は携帯の技術で進化

無線操縦できる世界最小のヘリコプター

 発売前から予約が殺到しているおもちゃがある。購入者は主に30代、40代の男性だ。大人の男性が夢中になるおもちゃとはなんなのか。その開発者に取材した。(取材・文=フリーライター・神田憲行)

 * * *
 その商品は株式会社シーシーピーが6月8日に売り出した「ナノファルコン」。赤外線で操縦できる室内で楽しむ小型のヘリコプターである。全長65ミリ、重さ11グラムというその大きさは「無線操縦できる世界最小のヘリコプター」として3月にギネスにも認定された。日経新聞に取り上げられるや、「どこで買えるのか」と中年男性からの問い合わせが殺到、記者が確認した段階では「アマゾン」では発売前に「売り切れ」となっていた。

「『ナノファルコン』の開発には10ヵ月かけました。おもちゃとしては異例の開発期間の長さです」

 と語るのは、同社企画開発担当の四釜勝彦さん。今回の開発は壁ともいえる「ボディの大きさ10センチ」を切ることを目標に進められ、四釜さんはパートナー企業の中国の工場に長期出張を繰り返し、ラストの追い込みには現地に1ヵ月間も泊まり込んだとか。

「試作機を作って微調整する繰り返しです。1号機はスピードが速すぎて操縦不能でした(笑)プログラムでモーターの回転数を制御したり、落ちても壊れないボディの耐性の追求、ブレード(羽)の角度なども細かく調整していく。ヘリコプターはバランスが大切なので、全部を少しずつ調整しながら進めていくので手間がかかるのです」

 小型化の決め手は、意外にも携帯電話の進化にあった。

「携帯がどんどん小さくなっていって、そこで使われている部品や技術がおもちゃにも流用できるようになってきたんです。『ナノファルコン』には三個のモーターが付いていますが、尾翼にあるテールモーターは携帯のバイブレーション部品の技術が流用されています。また携帯の充電池であるリチウム・イオン・ポリマー電池も『ナノファルコン』に搭載しています」

 ただ小さくするだけでなく、カーブするときの反応など操縦感覚にもこだわった。開発段階でやりこんだだけあって、四釜さんの操縦技術は神技に近い。撮影のため「ここまで来てホバリングで停止してください」とお願いするとピタリとそこに止まる。

「無線ヘリの入門機として価格も5000円以下に抑えて、初心者でも操縦を楽しめるようにしました。オフィスで疲れたときに、息抜きでデスクで簡単に飛ばしてなごんでもらえたら」

 同社が2006年に初めて「室内で遊ぶヘリコプター」として発売した「ハニービー」は、小学生のころラジコンヘリなどとうてい手が出せなかった「元小学生男子」である年配の男性を中心に人気になり、大ヒット商品となった。以降、他メーカーも参入して「「インドアヘリコプター」というおもちゃのジャンルもできた。技術者の努力とイノベーションによって高嶺の花だった製品が消費の手の届く範囲になるというのは、かつての家電大国だった日本の在り方に通じる。そこがまた大人の男の心をくすぐり、今回のヒットにつながっているのではないだろうか。

 四釜さんの次の目標は、「大きさをもう5ミリ小さくすること」だそうだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

運転席に座る広末涼子容疑者
《事故後初の肉声》広末涼子、「ご心配をおかけしました」騒動を音声配信で謝罪 主婦業に励む近況伝える
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
鶴保庸介氏の失言は和歌山選挙区の自民党候補・二階伸康氏にも逆風か
「二階一族を全滅させる戦い」との声も…鶴保庸介氏「運がいいことに能登で地震」発言も攻撃材料になる和歌山選挙区「一族郎党、根こそぎ潰す」戦国時代のような様相に
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏に「自民入りもあり得るか」聞いた
【国民民主・公認取り消しの余波】無所属・山尾志桜里氏 自民党の“後追い公認”めぐる記者の直撃に「アプローチはない。応援に来てほしいくらい」
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《普通の大学生として過ごす等身大の姿》悠仁さまが筑波大キャンパス生活で選んだ“人気ブランドのシューズ”ロゴ入りでも気にせず着用
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
遠野なぎこさん(享年45)、3度の離婚を経て苦悩していた“パートナー探し”…それでも出会った「“ママ”でいられる存在」
NEWSポストセブン
レッドカーペットに登壇した大谷夫妻(時事通信フォト)
《産後“ファッション迷子期”を見事クリア》大谷翔平・真美子さん夫妻のレッドカーペットスタイルを専門家激賞「横顔も後ろ姿も流れるように美しいシルエット」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
NEWSポストセブン