今や夏の要注意キーワードともいえる熱中症。熱中症で病院に搬送される人がここ数年増えており、とくに7月初旬からその数は急増する。ノザキクリニック院長の野崎豊さんに、改めて熱中症のメカニズムを聞いた。
「人間の体は、体温が上がると自ら下げようとする働きがありますが、気温が高いと体温をスムーズに下げることができず、湿度が75%を超えると汗も蒸発できなくなります。その結果、汗が大量に流れるのに熱を奪うことができず、体内が脱水状態になり、血液の粘度が高まって血流量も減少。めまいや立ちくらみに始まり、頭痛や吐き気、重度になると痙攣や意識障害まで引き起こすこともあるのが熱中症です。
日本の夏は大変、高温多湿ですから、熱中症が起こりやすい環境だといえますが、気温が低くても湿度が高ければ熱中症が発症しやすいので注意が必要です」
ポイントは大量に発汗することで失われるミネラル分。体内の調整機能を司っているミネラルが汗とともに流出し、調整のバランスが狂ってしまうのだという。
体は発汗によって体温を下げようとするが、汗とともに水分やミネラル(ナトリウム、カリウム、マグネシウムなど)が体から失われる。これらのミネラルが不足すると、内臓や筋肉など、体全体の機能を正常に保つ働きが崩れ、熱中症を発症。そこで、熱中症を予防するためには、水分補給に加えて、ミネラルもバランスよくしっかりとることが重要になってくる。ただ、ミネラルは体内で作ることができないため、食品などから摂取する必要がある。
では、ミネラルを効率的に補給するには何が得策なのか。前出の野崎さんは、漢方医学の観点からも、おすすめは、どこでも手に入る、日本人になじみ深い「麦茶」だという。麦茶にはさまざまな健康パワーがあって、実は涼をとる飲みものとして古くから親しまれていたとの文献がある。江戸時代に出版された食品事典『本朝食鑑』によると、麦茶は「麦湯」と呼ばれた夏の風物詩。「気分を穏やかにし、血を涼にする」と書かれている。
「特に“ミネラル入り”の麦茶は、血液をサラサラにして血流を促すことで体内の余分な熱を奪い、体温を下げるとの効果が、私どもの研究でも明らかになっています」(野崎さん)
※女性セブン2013年6月27日号